ドール

「愛」の形は人それぞれであるが、その「それぞれ」の中にはひどく歪んでいるものも存在する。その存在する「歪み」が本書に表れている。

その歪みとはいったい何なのか、そして誰から来ているのかというと、本書はある「少年」から来ている。その少年はある少女が好きになった。しかしその「好き」は単純な恋愛よりも、自分自身のもの、つまりは「ドール(人形)」にしたいが故の「好き」である。

その「好き」は物語が進んでいくうちにだんだんと歪んでいき、だんだんと人間としての感覚が遠ざかっていく。その遠ざかっていく中でもはや後戻り、あるいは救いを与えようもできないくらいにまでなってしまった。

恋愛の作品を色々と読んできたのだが、ここまで歪み切った恋愛を描いた作品を見たのは初めてである。もっと言うとメロドラマとは全く違う「歪み」を描いている部分を考えると「歪んだ愛」を描いた作品の中でも特に「異色」と呼ばれる一冊と言える。