耳鼻削ぎの日本史

おそらく本書はTVなどで取り上げることができない一冊と言える。タイトルからして非常にグロテスクなものになると言っても過言ではない。しかしながら歴史の中にはそういったことが行われた史実が残されているため避けて通れないものと言える。しかしこう一タイトルを見ると思わず怪談話の一つである「耳なし芳一」を思い出さずにいられないのだが、そもそも「耳鼻削ぎ」はどのような歴史を持っていたのか、民話・戦争など様々な角度から論じているのが本書である。

第一章「「ミミヲキリ、ハナヲソギ」は残酷か?」
元々「耳削ぎ」「鼻削ぎ」の刑罰は存在していた。もっとも死刑にも「八つ裂き」「銃殺」「毒殺」などのヴァリエーションがあったことと同じことが言える。そうした刑罰はどのような要因から受けることになったのか、事例とともに取り上げている。

第二章「「耳なし芳一」は、なぜ耳を失ったのか?」
冒頭で書いた「耳なし芳一」についても本章にて収録されている。その収録の中身としてなぜ「耳なし」なのか、そして中世の時代における「耳」と「鼻」はどのような役割を持っていたのか、本章では民話・歴史そのものを論じている。

第三章「戦場の耳鼻削ぎの真実」
「戦争」と言っても大東亜戦争に近しい時代ではなく、応仁の乱をはじめとした戦国時代における、いわゆる「戦(いくさ)」と呼ばれる舞台でも耳鼻削ぎがあったのだという。そもそもどのような例で見られたのか、事例の他にも「ルール」があったのだが、そのことも含めて論じている。

第四章「「未開」の国から、「文明」の国へ」
耳鼻削ぎは刑罰のみならず「見せしめ」「懲罰」といった役割を持っていた。その見せしめとして挙げられるのは豊臣秀吉が天下を取っていた時代にある。その時代には様々な「見せしめ」があったという。

第五章「耳塚・鼻塚の謎」
耳鼻削ぎの歴史の際として挙げられるのが「塚」である。歴史の教科書では「貝塚」といった貝を供養する場所として知られる場所があるのだが、耳や鼻にも同様の「塚」が全国各地にあったのだという。その存在したところとはいったいどこか、そのことを取り上げている。

耳鼻削ぎはメディアで取り上げられることはまずないと言える。そもそもそれを離すこと自体グロテスクであり、映像にするだけでも抗議をする人がいることからある意味「タブー」として挙げられるのかもしれない。そのことからこういった歴史は書籍で語られる方が良いのかもしれない。本書を読んでそう思った。