史上最高に面白いファウスト

ゲーテの名作の一つに「ファウスト」という戯曲がある。表向きとしては教養人ファウストの努力の物語というのだが、錬金術から黒魔術、さらにはその知性を得るために悪魔とも契約し、欲望の赴くままに動くといった作品である。構想60年を経て作り出された戯曲は数多くの作品にインスピレーションを受けたとしても知られている。有名どころではベルリオーズの「ファウストの劫罰」、ワーグナーの「ファウスト序曲」、さらには手塚治虫の漫画もある。そのファウストはどのような作品なのか、本書は第一部・第二部に分けて紐解いている。

「悲劇 第一部」
1808年に発表した第一部はメフィスト・フェレスとの契約をし、死後の契約をする。そのことで新たな悲劇を生み出し、なおかつ恋や悲しい別れが出ている。しかし一つ一つのセリフを見てみるとポジティブの要素も見て取れる。

「悲劇 第二部」
第二部もまた悲劇なのだが、「悲劇」とひとえに言っても第一部と第二部とで本質は異なる。そのことなる要素とはどこにあるのかと言うと、ファウストが紡ぐストーリーのスケールの広さもあれば、人間としてのあり方について問われるような場面もある。

もっとも私自身もファウストは何度か読んだことはある。しかしなかなかストーリーはつかめないまでもざっくりと呼んでみると人間としての「業」がおもむろに浮かんでくるのがよくわかる。しかし本書はそのファウストの有名な一説をかいつまみながら場面などを詳しく解説しているため、ファウストを読んだことのある人にとっても新発見があるし、なおかつ読んだことがない人でもファウストとはどのような作品なのかがよくわかる。