古都税の証言―京都の寺院拝観をめぐる問題

京都は昔ながらの景観が売りなのだが、その売りが景観問題を引き寄せている要因となっている。その要因が「古都税」になって出てきており、それが京都全体で「税問題」として取り上げられている。その取り上げられている古都税は一体どのようにして出来上がりどのような議論がなされてきたのか、そのことを関係者や経緯とともに洗い出している。

第一部「古都税問題・景観問題の経緯」
もっとも「古都税」は国の税ではなく、京都府の条例から出てきた税である。その税はいつできたのかと言うと昭和58年であるが、それ以前にも京都の文化を保護するための税構想があった。そのたびに反対意見が出てきていたものの、審議抜きなど強行的な手段で可決を急ぐようなことがあった。それが火に油を注ぐようなこととなり訴訟にまで発展したこともあった。また古都税の導入後には「拝観停止」と呼ばれる文化的なものを「保護」をうたって行うこともあった。いずれも理由は「景観」にあるのだが、その景観によって旅館施設とのいざこざが起こり、税と同じく訴訟にまで発展することがあった。

第二部「関係者インタビュー」
本章では税や条例を制定した人、さらにはそれに反対した人や取り上げた新聞記者、そして寺院の関係者など様々な立場から「古都税」「景観問題」の経緯を明かしている。

第三部「論考」
最終的に古都税はどのような役割を持っていたのか、拝観行為はどうしてあるのか、「拝観禁止」のきっかけとは何か、それらのことを結論として締めくくっている。

古都には古都ならではの問題がある。もっとも対策としての「税」は必要なのかもしれないし、景観保護も私の住んでいる鎌倉も同じように景観保護をうたっているだけに、他人事とは思えない。しかしそのような状況でも少なからず「問題」がはらんでいる。そのはらんでいる問題を本書にてあぶりだしていると言える。