やきとりと日本人 屋台から星付きまで

居酒屋の料理の代表格の一つとして「やきとり」がある。もっともやきとりは居酒屋に限らず子供にも人気があり、鶏肉を焼いた美味しさが魅力的である。私自身も酒を飲む・飲まないにかかわらず、やきとりを食べることがあり、最近ではコンビニのホットスナックのコーナーでも売られており、食べることがある。その「やきとり」の文化はいつ頃からできたのか、そしてどのようにして発展していったのか、そのことを分析している。

第一章「やきとりの歴史学」
もっとも「やきとり」ができたのは神話の時代からである。その時はジビエとしての料理にて作られており、江戸時代には鍋や焼き物などがあった。しかも仏教が尊重していた時代には殺生をタブーとしており、牛などの動物の肉を殺したり、食したりすることが禁止されていた時代の中で鶏肉だけは認められていた。もっともウサギも食べられることがあったが、便宜上数え方について耳を鳥の羽に見立てて「一羽」「二羽」といった数え方をするようになった話もある。

第二章「明治の鶏食文化学」
鶏食文化は明治維新からも発展を続けていき、牛肉や豚肉とともに広がりを見せていたのだが、中でも広がりを見せていたのが「もつ」と呼ばれる鳥の内臓を焼いたり、煮込んだりして食べる料理である。

第三章「昭和のやきとり老舗学」
昭和時代における「やきとり」は、小説はもちろんのこと、戦後には演歌・歌謡曲の歌詞にも使われることがあった。またやきとりは居酒屋の料理として根付くことになったのも戦後復興を始める時代だったともいわれている。

第四章「やきとり社会学」
やきとりは日本の社会においてどのような役割を持ってきたのか、焼き鳥の料理の進化とともに、居酒屋事情なども絡めて紹介している。

第五章「やきとり名店学」
やきとりのおいしい店は数多くあるのだが、著者自身が行ったやきとりの店で特に印象に残った名店を紹介している。もっともその中にはミシュランの星も獲得した名店まで存在する。

第六章「やきとりご当地学」
やきとりとひとえに言っても地域それぞれで違うやきとりが生まれるようになった。いわゆる「B級グルメ」にも名を連ねるようなやきとりまで存在する。本章では地域に根差しているやきとりは何かを取り上げている。

第七章「やきとりこだわり学」
やきとりにも「こだわり」を持つ人が少なくない。もっともどのようなこだわりを持つのかと言うと焼き方はもちろんのことたれや焼き鳥の種類、肉の鮮度に至るまで事細かに綴られている。

第八章「やきとり調理科学」
やきとりの調理にも奥深いものがある。もっともやきとりにするためには鳥がどのくらいにまで成育したら良いか、さらには炭焼きやどこの肉を使ったらよいか細かい観点で取り上げている。

第九章「肉用鶏学」
肉用の鶏は数多くあるのだが、もっとも鶏肉をやきとり以外でも数多く利用することがあり、唐揚げなどもその一種であり、様々な料理として扱われるためやきとりに留めることはできない。

日本人にて親しまれている「やきとり」は長い歴史の中で様々な進化を遂げ、今もなお愛されている。そのやきとりの奥深さを知るきっかけになる一冊である。