ギンイロノウタ

ミステリー小説の中で殺人事件が多くあるのだが、これほどまでに残酷な殺人がある作品は見たことがない。しかもその「残酷」さは殺人事件の現場ではなく、むしろその殺人を行った人の「殺意」にまで及んでいる。もっとも殺意が自閉症傾向などの境遇や性格からか、限りなく歪なものになり、そのいびつさがミステリーの要素に深みを加えている。

登場人物、それも殺人犯の性格の歪さが今までのミステリー作品とは一線を画していることから、ミステリー好きで、巷のミステリーでは物足りない人にとってはたまらない一冊と言える。反対にあまりにも歪すぎることからあまりミステリーになれていない人にとっては忌避したくなるような一冊である。いわゆる「ミステリーマニア」向けの作品と言っても過言ではない。