小山三ひとり語り

歌舞伎を全く知らない人にはあまり知られていない名前であるが、歌舞伎を知るとなるとその人の存在感は大きなものとなる。

「中村屋の生き字引」

著者につけられた異名のようなものである。その名と重なるほどの人生を著者は送ったと言っても過言ではない。と言うのは4歳の頃に歌舞伎入りするのだがその時に十七代目中村勘三郎(当時は三代目中村米吉)に弟子入りした。その後十八代目勘三郎、六代目勘九郎・七之助兄弟と長年仕え、90年もの間歌舞伎の人生を歩んできた。

中村屋三代の教育係など行いながらも長年舞台に立ち、歌舞伎座を始め様々な舞台・芝居小屋などを体験してきた。そのエピソードは数多くあり、歌舞伎そのものの歴史を持っていると言っても過言ではなかった。

NHKなどの放送では単独インタビューが組まれており、そこでも著者自身の人生、歌舞伎観などが語られている。

2013年に新しい歌舞伎座がオープンしたのだが、この歌舞伎座は「第五期」である。その2つ前の戦前の歌舞伎座(第三期)ができ始めた頃に舞台に立っていたため、歌舞伎座としても三代経験してきた。そのため歌舞伎の歴史そのものを背負ってきたことを本書でもってまざまざと伝わってくる一冊である。