葛飾北斎の本懐

葛飾北斎という名前を聞いて思い浮かぶものと言うと「富嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)」や「北斎漫画」などがある。その中でも前者の中における「神奈川沖浪裏」と呼ばれる荒波を描いた絵は歴史の教科書に載るほど非常に有名なものである。そのために江戸時代後期の中における「化政文化」を代表する画家であるのだが、しかし北斎は画業に執念を燃やすあまりに埋もれてしまった作品・エピソードなどがある。そのことを掘り起こしたのが本書と言える。

第一章「近世社会での浮世絵師の立場」
今となっては冒頭でも述べたように江戸時代を代表する絵師であるのだが、そもそも北斎の活躍した時代は「浮世絵」が広がりを見せるようになった。その広がりを見せるようになった浮世絵は、江戸時代の文化にどのような影響を及ぼしたのかも含めて取り上げている。

第二章「北斎の画業」
葛飾北斎が画業として有名になったのは20歳にてデビューしてから90歳で没するまで70年もの間絵師として第一線を活躍し続けた。しかしその第一線の中での活躍の中では様々な苦難や試行錯誤もあった。また70年もの間の中で画風も変えたのだが、その「変化」は何があり、どのような時代だったのかも併せて取り上げている。

第三章「北斎への評価は妥当なのか」
江戸時代の人物の中で唯一世界的にも影響を与えた人物としてアメリカの雑誌「ライフ」にも掲載された。しかも北斎の絵はゴッホをはじめとした世界的な有名な画家・工芸家・音楽家にも大きな影響を与えた。その一方で画業に情熱を注ぎ過ぎたあまり人格的に「奇人」と呼ばれることも度々あった。その要因として「葛飾北斎伝」と呼ばれる評伝作品にて残されているからである。

第四章「北斎の本懐」
そもそも葛飾北斎はどのような人間で、そしてどのような人生を過ごし、画風を変えていったのか、未だに表に出ていない作品などを中心に取り上げながら分析をしている。

日本を代表する絵師である葛飾北斎は90年の長い人生の中で何万もの絵を描いてきた。その描いてきた作品には北斎自身が思っている森羅万象そのものが表されている。それは没して170年近くの時を経ても今もなお人々に愛されている。