サイクス=ピコ協定 百年の呪縛

「サイクス・ピコ協定」は1916年5月16日にイギリス、フランス、ロシアの間で結ばれたオスマン帝国領の分割を約した秘密協定である。昨年締結されて100年を迎えたのだが、その協定は民族差別や難民などの現在も残っている問題として横たわっている。本書は協定を「呪縛」と見立てているのだが、そもそもなぜ「呪縛」なのかも併せて取り上げている。

第1章「サイクス・ピコ協定とは何だったのか」
サイクス・ピコ協定は領土分割の条約であるのだが、その領土分割を引き金としているのだが、それが「中東問題」にも起因するようになった。

第2章「露土戦争と東方問題の時代」
「露土戦争」はロシア帝国もしくはその前身国家とオスマン帝国の戦争であるのだが、実際には数として12回(その中にはクリミア戦争も含まれる)起こっている。幾度となく起こった露土戦争はなぜ起こったのか、そして3年前に起こった「クリミア併合」との関係は何かを取り上げている。

第3章「クルドの夢はなるか?」
クルド民族は悲劇の歴史でもあり、なおかつ流浪の歴史だった。その歴史の中には様々な戦争・紛争に巻き込まれ、難民になることもあった。本章ではクルド民族の現状と悲願を追っている。

第4章「再び難民の世紀へ」
20世紀は2つの世界大戦を含め、数多くの戦争が起こり、難民も出た。これは21世紀を迎えた後も変わりなく、特に2年ほど前に大量の難民がヨーロッパ各国などの国々になだれ込むようなことがあった。

第5章「アラビアのロレンスと時代」
「アラビアのロレンス」は1962年に公開されたイギリス映画であり、戦争映画であるのだが、この映画は中東政治に深く関わっているのだという。なぜ関わっているのか、そして中東政治とメディアとの関係は何かを取り上げている。

中東情勢は今もなお不安定である。もっともISILの存在も残っているだけでなく、隣国との紛争もあり、今もなお難民がいる。その現状が脱することが出来るのか、そこに「サイクス・ピコ協定」の矛盾があると言える。