妻が椎茸だったころ

想像していくだけでも奇妙であるのだが、想像通りのものではなく、むしろ妻の形見であるレシピとして椎茸を使った料理がある所にある。その椎茸が印象的で、そのタイトルになったのではないかと推察する。

本書は短編集であるのだが、共通しているのが「偏愛」であるという。愛というと清純なものであるのだが、「偏愛」となるとどこか歪なものにも見えてしまう。

事実「人」や「石」「花」、そして「椎茸」と対象物に対する異常なまでの「愛」がありありと表れている。その表れている中でどのような愛を育んでいくのかがよく分かるのだが、よく分かっていく中でちょっとした怖さもある。

しかしその怖さはホラーと言うよりもむしろ「愛が重い」と言う言葉にも合致するようにも見て取れる。もちろんネガティブな意味ではなく、ややポジティブな意味での「愛が重い」を5つの短編の中に表している。