戦国と宗教

戦争と宗教は思っている以上に密接な関係にある。方や戦争の混沌の中で救いを求めるために宗教にすがりつくような側面もあれば、様々ある宗教との対立によって戦争の引き金になるようなこともある。戦国時代にも同様のことがあり、大名の中にはキリシタン大名が生まれ、中には高山右近(福者 ユスト高山右近)のように後に列福した大名もいる。しかし当時の戦国時代には織田信長・豊臣秀吉といった天下統一を目指した武将から弾圧の対象になった。なぜ戦国武将はキリスト教と出逢い、キリシタン大名となっていったのか、戦国時代におけるキリスト教信仰とともに取り上げている。

第一章「合戦と大名の信仰」
川中島の合戦は戦国時代の中でも特に有名な合戦として挙げられるのだが、その中で戦った武田氏と上杉氏との両氏の関わりと神仏との関わりもあったという。

第二章「一向一揆と「民衆」」
「一向一揆(いっこういっき)」とひとえに言っても様々な種類があり、1466年に起こった近江・金森合戦を皮切りに長らく農民たちの一揆が起こった。もっとも一揆は「民衆」が蜂起して、上の権力に抗うといったものであるのだが、いわゆる「内戦」であったり、「クーデター」であったり呼ばれるのだが、そういった一揆も宗教に絡むものがあるという。有名どころでは江戸時代初期に起こった島原・天草一揆が有名である。

第三章「キリスト教との出逢い」
戦国時代においてキリスト教信仰が始まったのはフランシスコ・ザビエルの来日が挙げられる。その来日によってキリスト教の布教が始まり、やがて人びとへのキリスト教の信仰が広がっていった。もっともなぜザビエルが来日していったのか、そこにはイエズス会ならではの理由がある。

第四章「キリシタン大名の誕生」
布教は広がったことによって大名にも伝わっていき、大名の中にキリスト教を信仰するようになってキリシタン大名が数多く生まれた。しかし冒頭にもあったとおり、2人の武将によって弾圧の対象になった。

第五章「「天道」という思想」
フランシスコ・ザビエルが布教したキリスト教はイエズス会の者なのだが、そのイエズス会は「天道」と呼ばれる思想をもとにしたキリスト教を布教していった。そもそもイエズス会の目指す「天道」とはいったい何か、そのことを取り上げている。

戦国時代における宗教はキリスト教に限らず、比叡山焼き討ち事件など仏教にも影響を与えたのだが、本書はあくまでキリスト教が中心となっている。もっとも戦国時代とキリスト教は信仰と弾圧双方で取り上げられることが多く、海外でも歴史的な題材として取り上げられることがある。そのキリスト教と戦国時代のあらましがよく分かる一冊である。