中原中也――沈黙の音楽

日本を代表する歌人でもあり、詩人であった中原中也は作品自体は寡作でありながらも、一つ一つが印象が強く、今もなお読み継がれている。その詩はあたかも音楽が奏でられているような感触がある。その詩は中原中也が生きていた時代、そして逝去した後にどのようにして語り継がれたのか、そのことを取り上げている。

第一章「無限の前に腕を振る」
詩の世界は無限であるのだが、その無限はいかにして醸成されていったのか、そのことを取り上げている。

第二章「「大正」という時代」
大正時代は「大正ロマン」と呼ばれるほど歌に、演劇に、文学にと栄えた時代である。その時代の中で中原中也はどのような少年時代を過ごしたのかを取り上げているのだが、その時代は「天才」と「野生児」が共存していたという。

第三章「関東大震災の以前と以後」
関東地方でもっとも大きな地震の一つとして関東大震災であったのだが、その被害は東日本大震災や阪神淡路大震災を上回るほどであり、主に火災による焼死がほとんどであった。その出来事が中原中也を「孤立」の憂き目に遭うこととなった。

第四章「「歌」の発見」
その「孤立」を通じて発見したのは「歌」であった。その歌には何をもたらすのか、中原中也はそれを感じ取り、詩を紡ぐ道に走って行ったのか、その走って行った中で得たことを取り上げている。

第五章「『山羊の歌』から『在りし日の歌』まで」
その紡いでいく詩の中で「山羊の歌」や「在りし日の歌」まで今でも読み継がれている作品が次々と生まれた。なぜ生まれたのか、そして中原中也はどのような心境の中でつくっていったのかを取り上げている。

第六章「誰にどのように読まれたいか」
中原中也は30歳という若い年齢で夭折することとなったのだが、彼が遺した詩は寡作ながらも今もなお語り継がれており、明治~昭和前期を代表する詩人にまで登りつめた。

中原中也は何を詩にしてまとめたのか、そのことがよく分かる一冊である。