保育園問題 – 待機児童、保育士不足、建設反対運動

昨年あたりからメディアでは「保育園」に関わる話が出たような気がするのだが、実際にはそれ以前からも保育園に関する様々な問題があった。一例を挙げるとするならば「待機児童」もあれば「保育士不足」「保育園建設反対」が挙げられる。もっとも幼稚園があるのでは無いかと言うのだが、それぞれ管轄などが異なるため一概に解決することは難しい。なぜ保育園がメディアでも挙げられるのか、そして根本的な解決策はあるのか、その本質を分析すると共に糸口を探している。

第1章「日本の保育制度をつかむ」
冒頭でも書いたのだが、「保育園」と「幼稚園」は管轄も含めて定義が大きく異なる。それは、

「保育園と幼稚園では、管轄や法律が違います。保育園は厚生労働省の管轄で「児童福祉施設」となり、保育士は国家資格です。幼稚園は文部科学省の管轄で「教育施設」という区分ですので、教諭免許が必要です。保育園は0歳から利用できる児童福祉施設で、幼稚園は3歳からの教育施設というわけです」「ベネッセ 教育情報サイト」より)

とある。そのため解決するための部署も異なれば、他にも資格取得者を増やすにしても得るべき資格も異なる。他にも細々としたものがあるのだが、先述の参考サイトが非常に詳しいので参照されたい。

保育園は標準保育時間が長く、特に共働きの家庭にとってはありがたいのだが、その保育園自体が不足が続いており、幼稚園・保育園の両方を担う「認可こども園」と呼ばれる私設もできてきている。そのため保育所はつくられ続けているのだが、それでもなお追いついていないのが現状としてある。

第2章「待機児童はなぜ解消されないのか」
女性の活躍を推進していくことは必要なことであるのだが、そのためには子育ての機関を増やすことが必要になってくる。しかしながら第1章で述べたように保育園不足のことから児童を預けられない家庭がおり、それが待機児童となって取り上げられている。

第3章「なぜ保育士が足りないのか―給与だけが問題ではない」
保育園の保育士になるためには「保育士資格証明書」が必要であり、それを発行するためには指定保育士養成施設を卒業するか、保育士試験の全科目を合格する必要がある。しかしながら保育士としての資格を持ちながらも他業種に就職するなど、保育士として活躍を選ばない人も少なくない。その理由は決して給料だけの話ではなく、他にもあると著者は分析している。

第4章「「量」も「質」ものジレンマ」
かと言って、保育園や保育士を増やすにもまた前途多難である。後者は第3章でも述べたばかりであるのだが、前者の場合は保育園・認定こども園を建設するにも子どもの声がうるさい、騒音になるなどの理由から反対運動やデモを起こす近隣住民もいるほどである。そのために保育所の建設でも四苦八苦があるという。

第5章「大人が変われば、子育てが変わる」
もっとも保育所の問題は、日本人のあり方の問題とリンクする部分がある。それはかつては「お互い様」や「両隣三軒」という言葉があるようにつながりがありながら、保育園や近隣住民によって子どもを育てるような環境だったのかも知れない。しかしながら、そのつながりがなくなり、なおかつ「不寛容」と呼ばれるように、近隣が何をしたり、あるいは新しいものができたりしても反対をしたり、批判したりするなどの状況に陥っている。そのため「大人が変わる」こととして子育てをする環境を大人たちの単位でつくる、あるいはそれを行うように促すというようなことが必要なのかも知れない。

本書の著者は2003年から4年間、横浜市の副市長を務めていた。その中で福祉に関する問題を担当しており、待機児童や保育園に関して密接に関わっていた。そのことから待機児童問題をはじめとした「保育園問題」は他人事ではなかったのかもしれない。