ひやかし

「ひやかし」と言うと商売をしている方々にとってはイヤな思い出しかないイメージがある。もっとも商売で購入しようとする人を求めているだけあり、お金を払ってくれるお客さまを求めるような人を求めるため単純に下見・物色だけしようとする人を表しているためである。

ちなみ本書はどのような「ひやかし」なのかと言うと吉原の女郎であるのだが、武士の娘と一見恵まれている身分に見えながらも、事件により地に落とされ、なおかつ売れない女郎となってしまった。借金のカタとして売られてしまい打ちひしがれている間に張見世で浪人を待っている。しかしその浪人はただ単に見続けているだけの存在である。その浪人と女郎はどのような変化を起こしてきた、あるいは起こってきたのかを描いている。江戸時代の小説であるのだが、江戸時代ならではの恋愛事情を見事なまでも描いている一冊である。