囲碁文化の魅力と効用

小学校の時に囲碁をやったことを覚えている。今ではほとんどやらないが、以後の番組を見ることがたまに観る程度である。

しかし囲碁というのは五目並べのように簡単なものではない。碁石でもって陣地取りをするゲームであるため戦法や定石のみならず、細やかなルールも覚えなくてはいけない。しかし一度ルールを覚えれば囲碁の世界は無限に広いといわれているのでやればやるほど病みつきになり、勝っても負けても勉強になる面白いゲームである。最近では脳科学においても囲碁が注目を集めている模様である。

本書はそういった囲碁の歴史、魅力、そして脳科学における効用について考察しているものである。

第1章「「囲碁文化」の魅力」
著者自身の囲碁人生について書かれている。囲碁との因縁の出会いとともに今は亡き加藤正夫名誉王座をはじめ多くの囲碁にかかわる人物との対局を回想しているところである。僭越ながらであるが思い出の1局についての棋譜があったらよかったと思ったのは私だけか。

第2章「「囲碁」の起源と歴史」
囲碁の歴史は非常に古いが実際にはっきりとした起源はわかっていない。中国の書経によるものか占星術という説があるがいずれも有力ではないとしている(本書では孔子や孟子が出ているためその時代から浸透していた)。日本に渡ってきたのが奈良時代であるため約1300年にも及ぶ歴史である。そのときは上流階級の人たちが嗜んでいた。以後が表に出てき始めたのが歴代本因坊の初代である、本因坊算砂が出てきたとき、戦国時代である。信長や秀吉、家康が算砂に五子(黒を5つ置くというハンデ)で対局をしたという話もある。

第3章「現代社会における「囲碁文化」を巡る動き」
話は変わって現代における囲碁教育について書かれている。とりわけ東大では教養と指定後を教えており、石倉昇九段をはじめ多くの棋士が教壇に立った。日本棋院もいくつかの動きについてバックアップしており、囲碁文化の普及は教育として進められていることがわかる。私自身はそのことについては肯定的である。というのは前述でも書いたとおり勝っても負けても学べるゲームである。

第4章「政治家と囲碁」
今日の政界で渦中となっている民主党代表の小沢一郎と財務大臣をはじめ3閣僚を兼務している与謝野馨が一昨年の10月28日に対局をしたということで注目を集めた。政界と囲碁の縁は非常に深く財務大臣を務め「塩爺」こと塩川正十郎は関西棋院の理事長を務めているのみならず戦後歴代総理のうち半数以上が囲碁の愛好者であるという。
さて最初に述べた対局であるが小沢代表が勝利した。棋譜もあるので一度並べてみるといいだろう。

第5章「「囲碁文化」の効用」
わずか5ページであるが囲碁にまつわる名言が書かれている。

第6章「碁界は大転換期――再生に向けての道筋」
囲碁のことに関して知っている人は知っているかもしれないが、プロの囲碁界は中国や韓国勢に後塵を拝している。今トップを走っている棋士でも世界戦で優勝している棋士はほぼいないといってもいい。一昔前では日本勢が独占していた時代があったが、こういう黄金時代に戻るように今、囲碁界では改革の嵐が吹き荒れるよう願ってやまない。

第7章「教養・感性教育に「囲碁文化」を活用」
囲碁を学ぶというのはゲームを学ぶばかりではなく「マナーを学ぶ」こともできる。今囲碁は教育問題に一筋の道筋を照らす光となるのかどうか注目すべきであろう。

囲碁はこれからホットになるのかもしれない。「ヒカルの碁」という漫画が出てきて、囲碁ブームが起こったが、これからはブームという一過性ではなく、じわじわと日本の代表的な知的スポーツとして注目が集まることを願う。