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短編集

夜空に泳ぐチョコレートグラミー

本書は短編集であるが、人間としての生と死、さらには青春にいたるまでのジャンルが網羅されている。子どもの無邪気なエピソードかと思いきや重い話になってしまうこともあれば、いきなり「恋人の死」に直面するようなエピソードに至るまで、本当の意味で「網羅」されているようである。 短編集でありながらも先述の理由から読み応えがあり、自分自身の生と死を考えさせられる一冊に仕上がっている。不思議な感覚の一冊であるが、 […]

余命3000文字

本書は表題作を含めて、数多くの作品を収録しているショートショート集である。特に冒頭の「余命3000文字」は文字数もカウントされており、なおかつ3000文字の中で物語を見事に描かれている所に驚きがあった。また他にも「彼氏がサバ缶になった」などナンセンスのものから、「食べログ1.8のラーメン屋」などリアリティがあるようでいて、風刺が効いている作品(むしろ小噺というべきか)まで収録されている。 小説にな […]

光をえがく人

もしもあなたが気分が沈む、あるいはネガティブな状況に陥ったときに何を行うか。音楽を聴く、本を読む、飲食をするなど方法は沢山あるのだが、中にはアートに触れると言うのもまた心洗われ、ネガティブな気持ちから解放されると言う人もいる。 本書はそのような人たちを描いた短編集であるのだが、それぞれの境遇の中にある「アート」、そして触れることによってもたらされる効果が見て取れる。もっともアート自体は論理では無く […]

五つの季節に探偵は

人間には感情や理性の他に、「心」がある。しかしこの「心」が厄介で、表に出てくる心境もあれば、誰にも悟られることのない心の「闇」の部分もある。その「闇」の中に、隠された「本性」がある。 その「本性」を暴かずにいられないとある探偵が16年の長い月日の中で5つの事件と出会った。それぞれ春夏秋冬、そしてもう1つの春と合計5つの季節で以て描かれた短編集である。 一番古いものとして2002年春、そこから200 […]

緊急事態下の物語

「緊急事態宣言」は新型コロナウイルスの感染拡大の度合いによって出ており、これまで緊急事態宣言は4回、まん延防止等重点措置は2回発令された。第7波は発令されていないが、「BA.5対策強化宣言」が地域によって出ている。 本書はそのコロナによる緊急事態宣言下の中で紡がれる物語である。この「緊急事態宣言」の色が強かった時期として1回目の宣言下がある。その時は飲食店はどこの店も閉まっており、学校もなく、会社 […]

おとぎカンパニー モンスター編

3年前と今年の元日に続いて3冊目となった。「おとぎカンパニー」シリーズ自体、ある種「もしも」といったシリーズのように見えて、なおかつコミカルに作られており、面白く読むことができる。ちなみに本書はその第3弾の「モンスター編」である。 おとぎ話におけるモンスターはいくつもいるのだが、本書はペガサス、狼、メデューサ、ヴァンパイアなどが題材となっている。会社を経営するモンスターもいれば、会社の社員となって […]

クレイジー・フォー・ラビット

人間関係は年齢や年代、さらには今あるポジションなど、あらゆる要素で変化する。もちろん人間関係の中には、学生時代において築いたものが旧交を暖めるように、時間をおいて復活したり、ずっと続いたりするようなこともある。 本書は年代別の人間関係について短編集にて描いている。小中高大のそれぞれの学生時代、そして最後は30代とそれぞれの人間関係、特に友情の変化がどうであったか、もちろん著者の思い出も兼ねているた […]

飛石を渡れば

私自身「茶道」のことはよくわからないのだが、その茶道を行う中で「茶室」と呼ばれる所でやる所もあれば、外で行う「野点(のだて)」もある。特に茶室のイメージの中には、躙(にじ)り口に入るまでの中で飛石があるというイメージを持ってしまう。 本書はその茶道にまつわるエピソードを12編取り上げている。ちなみに取り上げられているものとして家族のものもあれば、実際に茶道を体験してのものも描かれている。情景もまた […]

愛じゃないならこれは何

よくある恋愛小説は、胸がときめくような作品が多く見られる。しかし本書は「恋愛小説集」であるが、ある意味「ホラー」のように思えてならない。 愛とは異なるのだが「恋は盲目」と言う言葉がある。本書で収録されている恋愛小説の数々は何とも恋愛に対して違う方向で盲目になっているように思えてならない。恋愛の形はそれぞれであるのだが、その「それぞれ」がかなりぶっ飛ぶ、というよりは原形をとどめないほどねじ曲がってい […]

ウミガメみたいに飛んでみな

仕事においても、プライベートにおいても「うまくいかない」時に遭遇することは少なくない。人によっては特に「挫折」と呼ばれる経験をしてしまい、心が折れそうになることもある。もちろん「心折れる」状況によっては一人で立ち上がることができる一方で、立ち上がれないようなこともある。特に後者は周囲の「支え」や「励まし」が不可欠である。 本書はそのような状況に陥る若者たちを描いている短編集である。就職活動から恋愛 […]