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文芸・評論

流星のソード 名探偵・浅見光彦vs.天才・天地龍之介

浅見光彦と天地龍之介の2人が織りなすミステリーであるが、そもそも浅見光彦シリーズは内田康夫氏が長きにわたって作られたシリーズであり、サスペンスドラマにもなったほどである。そのシリーズを内田康夫氏が財団をつくり、これからを担う作家として公認したのがこの「浅見光彦・天地龍之介シリーズ」である。 この2人の織りなすミステリーだが、今回の舞台は北海道小樽市である。北海道でも一二を争う観光都市であるのだが、 […]

曙光を旅する

歴史小説でも有名な葉室麟が西日本を旅し、歴史や文豪などを知るために渡り歩くという一冊であるのだが、その西日本を旅したことにより、生まれた歴史小説も数知れず存在する。いずれも歴史的な論拠も捉えつつも、物語としても仕上げてきている。その原点が本書にあると言える。 ちなみに本書は朝日新聞の西日本版で掲載したものもあれば、本書のために書き下ろしたものも存在するため、連載しか観たことがない方々にとっても愉し […]

ゆうゆうヨシ子さん-ローボ百歳の日々

本書に出てくる「ヨシ子さん」は著者の母であり、なんと100歳を迎え、現在102歳である。その息子である著者も今年で喜寿を迎えるため、老齢親子と言えるのだが、ここまで親子共々長生きでいられることも珍しくもあり、素晴らしくもある。 本書はそのヨシ子さんが80代から102歳までの中でしたため続けてきた俳句を披露しながら、日常を映し出している。 単純に親子の日常であるのだが、年齢も年齢なのか、それとも著者 […]

奇跡の本屋をつくりたい くすみ書房のオヤジが残したもの

かつて、北海道札幌市に「くすみ書房」という本屋があった。もったいないことに私自身1度も行ったことがなかった。もっと言うと存在自体本書に出会うまで知らなかった。そのことを後悔してもしきれないほどである。 もともと「くすみ書房」は札幌市の琴似・大谷地と構えており、経営危機に陥った頃からユニークな試みを行い、マスコミでも取り上げられたほどであったという。独自の試みを行い、一時的に回復したが、2015年に […]

ミリオンセラーガール

ここ最近では「出版不況」ということを聞く、もちろん雑誌も関わらずであるのだが、書籍もまた同様のことが起こっている。そのような状況の中でも売れるものは売れており、中にはミリオンセラーになるようなものまで存在する。もっともミリオンセラーになるような本は私の知る限りでは「かなり著名な作家の新作」か、もしくは口コミによって絶え間なく広がりを見せてなっていくかというものである。 かつてミリオンセラーになった […]

四季彩のサロメまたは背徳の省察

とある高校の朗読部において、後輩から頼まれた女性の話について相談を受けたのだが、その女性は存在するはずのない女性であり、それが引き金となって事件が起こるというミステリー作品である。 女性関係の拗れと言うことはミステリー作品にてよくあるのだが、本書はミステリアスな人間関係であると同時に、実在する女性との関係もあることから官能的なタッチもある。 もっとも「サロメ」というとリヒャルト・シュトラウスによっ […]

玉瀬家、休業中。

本書のタイトルを見るや、一家で何か商売をしているのではと思ってしまったのだが、実際はそうではなく、長らく一家離散した家族が、いわゆる「なんだかんだ」で久しぶりに一つ屋根の下に暮らすといった物語である。 家族はと言うと、「守銭奴」「自意識過剰」「超ネガティブ」の女性たちであり、水と油が一緒に混じって、さらに爆弾が入るという、見るからに危険な家族のように思えて成らなかった。女性3人のため「姦(かしま) […]

地上の星

本書のタイトルを見ると中島みゆきの同曲を連想してしまうのだが、本書はそれとは無関係である。 本書は島原地方におけるキリシタンを取り上げている。島原と言えば天草四郎時貞が起こした1637~1638年の「島原・天草一揆」が有名であるのだが、本書はその一揆が起こる40年以上も前、戦国時代において豊臣秀吉が天下統一を成し遂げようとした時代における島原・天草における「乱」を取り上げている。そのためか歴史的な […]

鳥打ちも夜更けには

世界中を見渡すと「天国」や「楽園」といった言葉を標榜するような場所も存在する。中でも「楽園」と言う文字で有名なところで言うと、「最後の楽園」と呼ばれ、2015年に映画のタイトルにもなったコスタリカが挙げられる。 では日本はどうかというと、「楽園」と言えるところはいくつか存在する、私のイメージからすると沖縄がその一つかもしれない。本書は架空の「楽園」であるのだが、鳥が多い街であり、なおかつ「鳥打ち」 […]

みちづれはいても、ひとり

「旅は道連れ,世は情け」という諺がある。これは、 「旅では道づれ同士が助け合い、世渡りでは互いに同情をもって仲よくやるのがよい」(「広辞苑 第七版」より) とある。しかしながら、本書で取り上げている「みちづれ」は仕事も男ともうまく行かない40代の女性同士といった、まさに「奇遇」の中で出あったっふたりが行き場のない旅を出て、そこから何をつかむのかという物語である。 そもそも40歳となると「不惑」とな […]