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文芸・評論

テノヒラ幕府株式会社

何とも奇妙な会社名であるのだが、中身もまた「奇妙」である。その会社は簡単に言うとスマホゲームの開発会社であるのだが、会社で働く人びとは文字通りの「十人十色」といった印象が非常に強くあると言っても過言ではない。会社の、そして文字通りの「テノヒラ」の中でどのような開発を行い、人間関係が作られていくのか、架空でありながらも、痛快に描かれている節が強くある。 スマホゲーム開発の現場はシステム開発の中でもけ […]

愛すること、理解すること、愛されること

男女関係は思っている以上に複雑なものである。その複雑であるからでこそ、一つの物語として醸成されることが大いにある。その物語はいじらしいようなものもあれば、本書のように愛憎(むしろ憎悪の方がウエイトが大きい)を織りなすような物語もある。 本書は5人の男女が織りなす物語であるのだが、謎の死から出てくる事件が男女の愛憎を生むようなものである。その愛憎劇はまさに昼ドラのような雰囲気、いやそれ以上のものを醸 […]

ポンコツ探偵の名推理

ある捜査の関係で刑事をクビになり、なおかつ貧乏で妻子も、この先のあてもないといった「ないない尽し」の探偵が、刑事時代に逮捕した元スリとともに事件を解決していくと言うものである。 そのことを考えていくと確かにポンコツであるのだが、「迷探偵」や「凸凹探偵」と言いかえた方が良いのでは無いかと邪推してしまうのは私だけだろうか。 とはいえ凸凹な中で依頼を受けながら難事件・珍事件に遭遇するのだが、探偵としての […]

優しい水

本書のタイトルを見るからに、ミネラルウォーターを連想してしまうのだが、本書はそうではなく、川で見つけた魚を飼育するために拾った先に遭遇した事件について取り上げたミステリーである。 ミステリーのトリガーが魚から「水」になっていったところも特徴的である。中学生の好奇心が事件となり、そのことで本当の意味での「様々な」人たちが関わっていた。しかも「水」自体が事件ではなく、ある病気についての引き金にもなって […]

オバさんになっても抱きしめたい

本書の表紙の右の女性がなんともバブリーな女性であると同時に、一昨年に大阪府立登美丘高等学校ダンス部が「ダンシング・ヒーロー」の題材として使われたことコスチュームでもある。 バブリーな時代で20代を謳歌した女性が俗に「アラフォー」と呼ばれるような時代、毛独りはそのバブル崩壊してからの不景気しか分からない「アラサー」の女性の2人の織りなす物語である。 単純に物語の大筋は「ジェネレーションギャップ」や「 […]

恋するハンバーグ 佃 はじめ食堂

料理から生まれる物語もある。食堂から生まれる人間模様もある。帝国ホテルの副料理長を辞めて、洋食屋をオープンさせた主人公とその家族の物語であるのだが、その物語とハンバーグをはじめとした料理には愛情が溢れているように思えてならなかった。 いわゆる「佃島」として知られる東京・佃にて洋食店を開いたがそこでは様々な事件が起こるのだが、その事件は陰湿なものではなく、むしろハートフルな形で解決に導いていくような […]

BLOOD ARM

集落における殺人事件はよくミステリー作品では出てくる。もっとも限界集落と呼ばれる中では差別と言ったこと、さらには四方を山に囲まれた街では逃げ場がない、あたかも密室のような殺人事件が起こるような作品さえある。 しかし本書はミステリー作品とは異なり、天変地異が起こったり、ありふれた環境の中ではまず出てこない「触手のような何か」も出てくるなど、ある種の「SF」や「ファンタジー」と呼ばれるような現象が起こ […]

11月のジュリエット

少女たちが修学旅行のために飛行機に乗ったが、その飛行機で謎のガス殺人事件が起こり、さらにハイジャックの事件に見舞われる。しかもそのハイジャックで降り立った地はアラスカ。しかも極寒の季節である時期であり、まさに「サバイバル」の要素を見せることとなった。 その「極限」と呼ばれる状態からいかにして「生き残る」のか、そして事件はどうなっていくのか、そのことについて描かれている。 ミステリーというよりもサス […]

岸和田少年愚連隊 不死鳥篇 カオルちゃーん!!

大阪府岸和田市と言えば「岸和田だんじり祭」に代表されるところとしても知られており、子どもにあったやんちゃさがそのまま大人になった男たちが多くいるという。もっともそれを象徴づける作品として本書のシリーズである「岸和田少年愚連隊」がある。 ちなみに本書はその頂点に立った男が死んだという所から物語は始まる。「全身武器」といわれ、まず死ぬような男ではない人がなぜ死んだのか、その男の死を知った中学生はどのよ […]

ザ・ブラックカンパニー

本書のタイトルからして「まんま」と思ってしまうのだが、実際に読んでみたら、まさに「まんま」であった。 タイトル自体は「ブラック企業」の企業を単に英語化しただけのことであるのだが、そもそもブラック企業にて働く人びとのことを描いているのだが、その悲喜交々ぶりは何とも言えない雰囲気を醸し出している。 スカウトを受けたが、かなりのブラックぶりな仕打ちを受けているのだが、その仕打ちを受ける中でも突っ込みどこ […]