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文芸・評論

共犯者

本書はミステリーの中でもよくある、1つの殺人事件を追っていくというものであるのだが、その殺人事件が意外な人間関係をあぶり出していくこと、さらには家族や警察、世論まで動き、やがて壊れるなど1つの殺人事件をきっかけに、人間、あるいはその周りの人びととの関係にある「闇」が明らかにされるという一冊である。 もっとも事件の謎を解き明かすと言うよりも、むしろその謎解きの中に出てくるなかでの、世間・人間関係の変 […]

緊急事態下の物語

「緊急事態宣言」は新型コロナウイルスの感染拡大の度合いによって出ており、これまで緊急事態宣言は4回、まん延防止等重点措置は2回発令された。第7波は発令されていないが、「BA.5対策強化宣言」が地域によって出ている。 本書はそのコロナによる緊急事態宣言下の中で紡がれる物語である。この「緊急事態宣言」の色が強かった時期として1回目の宣言下がある。その時は飲食店はどこの店も閉まっており、学校もなく、会社 […]

情無連盟の殺人

本書では「アエルズ」と呼ぶ感情がだんだんと失う病気であるが、実際の傾向として「アレキシサイミア(alexithymia)」がある。アレキシサイミアは認知・感情などを表すのが不得意な「傾向」を示しており、論者によっては「病気」「障害」といった定義をなされるが、本来は「傾向」のみであるため、病気扱いにならない。おそらく著者はその傾向を参考に「アエルズ」と架空の病気として定義しているのかも知れない。 本 […]

聖女か悪女

表紙からしておどろおどろしさ全開の印象を持っているのだが、中身も負けず劣らずのおどろおどろしさだった。結婚パーティーという幸せの最中で起こった、あまりにも惨い悲劇。しかもその悲劇にはある「復讐」があった。 しかもその事件は殺人事件と監禁事件の2つであるが、殺人も8人を、さらには監禁も子ども8人をという人数もさることながら、その動機はまさに、人間としての「悪」という伏魔殿を見いだした。 ミステリー作 […]

贄の花嫁 優しい契約結婚

明治維新において海外の文化が多数取り入れられ、独自の和洋折衷の文化を創り上げた。特に大正時代において文化・芸術を含めその風潮が強く、現在でも語り継がれる「大正ロマン(大正浪漫)」がある。もっともこの時代を背景にした作品は小説・マンガ・アニメ問わず数多くある。 本書も例外なく大正ロマンの時代を舞台にしている。この時代は政略結婚をはじめ、恋愛といったものではなく、むしろお見合いや、許嫁といった要素が強 […]

警視庁アウトサイダー

警察小説となると、よく「刑事のコンビ」というのがテンプレート化されているように見えてならない。とりわけここ最近の刑事モノの小説となると凸凹コンビで、最初の印象は最悪だった。そこからだんだんと事件を解決することにより、絆を深めるといったものが主になってくる。 本書で取り上げる刑事コンビは表紙右にて描かれている刑事こそワケありを画に描いたような刑事である。それもそのはずその筋を専門としていた所から異動 […]

一九六一 東京ハウス

61年前の東京は、昭和後期を象徴付ける街並みであったという。「古き良き時代」なのかどうかはわからないのだが、当時は高度経済成長にさしかかり始めたところで、経済大国に向けて着々と準備を行う時代だった。同時に、この60年代になると「六十年安保」や「大学闘争」「ベトナム戦争」など戦後日本を象徴するような出来事が次々とあった。もちろん64年に東京オリンピックも開催されたことは言うまでもない。 その1961 […]

哄う北斎

絵画をはじめとした美術品には、何とも言えない美しさと魅力が備わっている。特に歴史的な作品となると価値は跳ね上がり、「高貴な収集」「贅沢品」といった見方もするようになる。また中には、美術品を高値で取引を行うような方々もいる。 本書はその美術にまつわるミステリーである。とある悪徳美術商と実業家、さらには美術集団とのせめぎ合いを描いているのだが、よくあるミステリーとは異なり、カネの行方、さらには美術品の […]

神様には負けられない

本書は義肢装具士の世界を描いているが、もっと言うとその専門学校の実習にて奮闘する学生の姿を描いている。ここ最近では義足や義手など「義肢装具」のバリエーションは充実しており、今年・昨年と行われたパラリンピックでは、様々な競技用の義肢装具があることがよくわかる。 しかしその装具はそれぞれの体型や用途などにあったものをつくる、あるいは装着しなければならず、説明なども求められることが多い。しかも義肢装具士 […]

ワンさぶ子の怠惰な冒険

著者の家族が北海道から地元・福井に帰ってからのことを綴った1冊である。5人家族+犬1匹といった構成であるため、様々な出来事が起こってもおかしくない。案の定本書では各月ごとにどのような冒険や出来事があったのか、一つ一つ綴られているのだが、そこには家族と犬との「日常」がありふれている。 著者と夫と子ども三人、そして犬の家族だが、中でも子ども三人がそれぞれ「進学」をしていく。その中での「受験」もあるなど […]