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短編集

私はあなたの記憶のなかに

本書は表題作を含めて全部で8編収録されている。元々著者は長編も描くことがあるのだが、元々のホームグラウンドは短編と言えるほど、短編の作品が数多くある。それ故か小説雑誌にも度々取り上げられている。本書で収録されている作品も過去に雑誌にて取り上げられているものばかりである。 しかし「取り上げられている」と言ったが、初出が古くて1996年、新しくて2008年とどちらかというと古いものばかりである。とはい […]

大人になる時

人は誰しも「大人」になる。その「大人」となる定義は肉体的に大人になることもあれば、人によっては精神的に「大人」になるという意味合いもあり、人それぞれとしか言いようがない。 本書はその「大人」になることについてをエピソードを綴った短編集である。しかし「大人」となると、良い部分もあれば悪い部分もあるのだが、本書はむしろ「悪い」部分の方が強く表れている。しかもその「悪い」部分が「ホラー」の如く描かれてお […]

無貌の神

本書は短編集であるが、全てダークな話で統一されている。 その中で、最初に出てくるのが表題作である「無貌の神(むぼうのかみ)」である。そもそも「無貌の神」自体は、 クトゥルフ神話に登場する邪神「ナイアルラトホテップ」の異名ピクシブ百科事典より とあり、なおかつそれを題材にした作品としてロバートブロックの同名の小説がある。壮大な世界観で有ながらホラーの要素も多いクトゥルフ神話の中でも無貌の神ことナイア […]

ファイナルガール・サポート・グループ

「ファイナルガール」は元々、 ホラー映画に登場する人物類型である。1960年代後半以降のアメリカで大量に作られたホラー映画が、一様に「純粋な若い女性が男の殺戮者と対決するが最後には生き残る」という構造をもっていることが映画研究の分野で注目され、この類型的な女性像が映画研究者キャロル・クローバーによって「ファイナル・ガール」と命名されたWikipediaより と意味している。そのため「ホラー」の分野 […]

叙述トリック短編集

本書の冒頭に この短編種は『叙述トリック短編集』です。収録されている短編には全てトリックが使われておりますので、騙されぬよう慎重にお読みくださいませ。p.8より と記載されている。しかも冒頭は「読者への挑戦状」と銘打っており、著者と読者との駆け引きといった魅力も持っている。 短編集のように見えて一編それぞれに、著者の織りなすトリックがどこにあるのかを、短編の物語の中に散りばめている。もっとも冒頭に […]

ふりかえる日、日―めいのレッスン

物語は、突然の出来事などから起こることもあれば、何気ない日常からも生まれる。特に何気ない日常の中にも多少なりの「変化」があるのだが、その「変化」のあり方が、日々の物語を紡いで行く。 本書は主人公の姪が日々触れるあらゆるものに耳を澄ませて成長して行くと言うものである。五感のうちの「聴覚」によって春夏秋冬を描き、なおかつ物語として織りなしていく所に魅力がある。 ショートショート形式にて描かれており、タ […]

静かな終末

2019年11月に逝去したSF小説の大家が残したショートショートのうち、本書は選りすぐりで50編収録している。 ちなみに収録されているショートショートの内容というと、SF作品と言うよりも日常的なものもあれば、日常的でありながらもナンセンスなタッチでつくられているもの。もっと言うとSFと、本当の意味で「多種多様」と言う言葉がよく似合う。 元々SF作品の大家であるが、それだけでなく、長編作品を生み出す […]

雨の日は、一回休み

「おじさんだってつらい」 この言葉がどうしても頭から離れられない一冊である。「男女雇用機会均等法」が施行される前はおじさんたちは頑張れば活躍できる土壌があった。しかし先述の法律が施行され、また社会的な風潮が変わってからは、実力などが伴わなければ、淘汰される。それは「おじさん」とて例外ではない。 本書はそのおじさんの悲哀を5編描いている。方やセクハラ疑惑をかけられ四苦八苦し、方や女性後輩と昇進争いに […]

ぐるり

人の生きる道も季節と同じように、ぐるりと巡る。それは人の出会い・別れもまた同じようなものなのかもしれない。その人との出会い・別れ、さらにはすれ違いなどの交錯がふんだんに盛り込まれている小説集の一冊である。短編集のようにも見えるのだが、短い作品もふんだんに盛り込まれているため、どちらかというとショートショートと言える。 実は著者自身作家であるものの、作詞家、バンドミュージシャン、ラジオパーソナリティ […]

その意図は見えなくて

物事には「視点」はもちろんのこと、当事者における「意図」が存在する。事により意図が無かったり、視点が少なかったり、逆に多かったりする。 本書は表題作を含めた5つの短編集であるが、その中に収録されている表題作は第42回小説推理新人賞受賞作である。その受賞作に恥じない推理作品だが、冒頭にあった「視点」「意図」の妙が推理の中にてふんだんに盛り込まれていた。高校を舞台にしており、高校生たちが推理の入り交じ […]