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小説

黄金夜界

著者の橋本治氏の最期の一冊である。なぜ「最期」と記載したかというと、本書を描き終えた後の2019年1月、肺炎のためこの世を去った。橋本氏は言うまでも無く作家として、さらには評論家として多芸多才に富んでいた。 本書の話に入るのだが、元々明治期のベストセラーに尾崎紅葉の「金色夜叉」がある。最愛の恋人を奪われ、その怨恨から高利貸しとなり、復讐を行うというものである。それを現代版にアレンジしたのが本書であ […]

アウグストゥス

紀元前にローマ帝国が席捲し、「パクス・ロマーナ(ローマによる平和)」をもたらした。その基礎を築いたのが、ガイウス・ユリウス・カエサルだが、後を継いだのがカエサルの養子であるアウグストゥスである。武装蜂起や内乱などを戦い抜き、ローマ帝国を築き、初代皇帝となった。世界で初めて「帝国」という「国家」をつくり上げ、元首政を敷き、「パクス・ロマーナ」となった。最も大きな功績であるのだが、細々とした功績を挙げ […]

茶屋四郎次郎、伊賀を駆ける

茶屋四郎次郎という名は戦国時代から江戸時代にかけて3人存在した。戦国時代において活躍した方が初代、関ヶ原の戦いで活躍した方が二代目、江戸時代において特権商人として巨万の富を得た三代目といる。 ちなみに本書で取り上げている「茶屋四郎次郎」は初代であり、戦国時代において徳川家に仕えながら活躍を遂げてきた後に、呉服商に転身したエピソードを描いている。ちょうど本能寺の変に伴って国同士の戦いが激化していくな […]

本を守ろうとする猫の話

本書は日常のようでいて、実はファンタジーである。というのは古書店を閉店し、親族に引き取られそうになった時に、人間の言葉をしゃべる猫が現れた。そこから物語が始まる。古書店の本がたくさんあるが、その本に対して「ただの本」で終わらせるのか、それとも「本」に対してどう向き合い、救っていくか、そのことを描いた物語である。 私自身は仕事柄、本と向き合うことが多々ある。毎日のように書評を行っているためであるのだ […]

ていん島の記

雲の上に浮かぶ島にて描く冒険譚である。いわゆる「ファンタジー小説」と呼ばれるものであり、それぞれの部族の人が飢餓から救うために旅をすると言うものである。ファンタジーとはいえど魔王と戦うと言うよりも、神の力を解放するための旅であり、その旅の中で出会う「試練」に出くわし、乗り越えていくというものである。 その試練に対して、果たして今ある平和は果たして正しいのか、そして3つの部族の均衡が果たして正しいの […]

インスタント・ジャーニー

もしも世界一周の旅をするのであれば、数ヶ月ほどかかるかもしれない。しかも昨今は新型コロナウイルスの影響により、入国制限している国もいくつかあり、なおかつ旅行をするにもどうしても避けてしまうような時である。 ただ、空想の「旅」であれば、いつでもどこでも、何度でもできると言うのだから便利である。しかも本書はそれを行うことができるショートショートの一冊である。本書の帯には「1話5分」とあり、しかも全部で […]

星空の16進数

16進数というと、あまり聞き慣れない人もいるかもしれないのだが、コンピューターやウェブシステム、あるいはウェブデザインを行っている方々であればなじみ深い進数である。もともと「0」から「9」まである10個の数字で成り立つのが10進数とあるが、16進数は10進数の数字に加えて、アルファベットの「A」から「F」までの16個の数字を1桁にてなり立たせるものである。 特にウェブデザイナーの中では色彩を求める […]

毒よりもなお

カウンセラーと自殺願望の高校生の物語である。カウンセラーと高校生が初めて会ったのは、図書館内で開かれていた出張カウンセリングの所である。そこで高校生が悩みを打ち明けたのだが、その時に初めて自殺願望であることが明らかとなった。しかもその高校生から明かされたのは、ある「サイト」である。 今となってはあるかどうかもわからないのだが、10数年前には「裏サイト」や「闇サイト」と呼ばれた中で、自殺サイトという […]

老侍

兵士というと、若い人をイメージするのかもしれないのだが、老人が兵士や戦士として戦場に赴くと言うシーンもある。実際に老兵の中にも大きな活躍をする人物もいるほどである。 本書は短編集であるが、いずれも老兵たちの活躍を描いている。その老兵は6人。方や一向一揆を迎え撃つため、息子らの敵を討つため、軍師として重要な戦いを指揮するため、息子の謀反に対抗するためと様々である。 老境となると、身体的な能力は落ちて […]

いきぢごく

漢字に直すと「生き地獄」である。とある芸能事務所の会長が、とある番組で体験していることを連想してしまう。 それはさておき、本書は42歳のとある女性が父から相続することとなった遍路旅の日記を取り上げている。実はこの遍路日記は戦前に綴られたものであり、しかも大東亜戦争の前に当たる。当時は車もなく、なおかつ徒歩でお遍路をするため、足を始め、色々な所を痛めつけながらの旅であり、今のような人生とは、自分とは […]