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評伝

天下一の軽口男

伝統芸能にも必ずといってもいいほど「始祖」が存在する。落語の世界でも江戸落語では鹿野武左衛門がおり、上方では初代露の五郎兵衛や本書の主人公である米沢彦八がいる。上方落語界の草分け的存在であり、いまとなっては上方の落語祭として「彦八まつり」と銘打っているほどである。 その彦八は「笑い」そのものを商売にすることを思い立ち、幾度の苦難・挫折を経験しながらも、日本における「笑い」の文化をつくった。その物語 […]

父・横山やすし伝説

おそらく昭和の「MANZAIブーム」の中核にいたコンビとして横山やすし・西川きよしであると言っても過言ではない。そのうち横山やすしが昭和の漫才界の中核を成した人物の一人であることもまたよく知られている。 その一方で様々な事件を起こした人物であった。その事件により大阪弁である「やたけた」といった言葉がよく似合う人物こそ、著者の父である横山やすしその人である。本書は逝去してから22年経つ今、長男の視点 […]

天を想う生涯~キリシタン大名 黒田官兵衛と高山右近~

キリシタン大名は数多くいるのだが、その中でも有名な人物もいる。とりわけ本書で取り上げる高山右近は客将として前田家に使えるも、キリシタン大名であることに国外追放され、フィリピンにて逝去した。今から3年前にローマ教皇フランシスコによって列福され、キリシタン大名としては初めて福者となった。 さて本書である、本書は高山右近と黒田官兵衛(黒田孝高の通称)の2人のキリシタン大名がどのような境遇を辿ったのか、そ […]

中原中也――沈黙の音楽

日本を代表する歌人でもあり、詩人であった中原中也は作品自体は寡作でありながらも、一つ一つが印象が強く、今もなお読み継がれている。その詩はあたかも音楽が奏でられているような感触がある。その詩は中原中也が生きていた時代、そして逝去した後にどのようにして語り継がれたのか、そのことを取り上げている。 第一章「無限の前に腕を振る」 詩の世界は無限であるのだが、その無限はいかにして醸成されていったのか、そのこ […]

仁者無敵 甫庵伝

中国大陸の思想の中ではビジネスにしても人生にしても大きな教えとなるような古典がある。その古典の中には孟子といったものがある。「性善説」の象徴の一つであり、なおかつ「仁」の教えを重んじる学問の一つである。 その学問は歴史的な人物にも伝えられ、忠臣らにも浸透していった。その浸透していった人物には織田信長や豊臣秀吉の評伝を残した人物にも伝わり、孟子の教えこそが評伝を残そうとしたきっかけであるという。 も […]

市川猿之助傾き一代

市川猿之助の名跡はすでに四代目に受け継がれており、本書で紹介される猿之助はその前の代であり、現在は二代目市川猿翁である。現在でこそパーキンソン病を患っており、満足に舞台をこなすことができないのだが、現在は実子である九代目市川中車(香川照之)の稽古指導を行っている。三代目猿之助は歌舞伎界の孤児でこり孤立無援の状況、なおかつ新聞や劇評家からの批判にもさらされながら、ケレンの演出やスーパー歌舞伎を誕生し […]

悪の出世学 ヒトラー・スターリン・毛沢東

「悪」と呼ばれる人物がいる。その人物は第二次世界大戦前後に活躍した独裁者の3人であり、数多くの民を虐殺した人物の3人である。その3人はそれぞれの道を歩み、独裁者への道をたどっていった。そのプロセスとは一体どのようなものか、本章では「立身」「栄達」など3つのポイントに分かれて取り上げている。 第一部「立身」 ちなみに言っておくがここでは毛沢東は出てこず、ヒトラーとスターリンの2人を取り上げている。両 […]

ガルブレイス――アメリカ資本主義との格闘

皆さまはジョン・ケネス・ガルブレイスを知っているだろうか。ちなみに私は本書に出会うまでは全くと言ってもいいほど知らなかった。それもそのはずで20世紀最大の「経済学の巨人」と言われていた人物だが、もっともガルブレイス自身が2メートルの身長のため「経済学の巨人(物理)」とも言えるためである。 しかし身体的に「巨人」なだけでなく、経済学としての功績を多く残してきたからでこそ「巨人」と言う名で畏敬の念を表 […]

九代目松本幸四郎

昨年の12月に記者会見が行われ、37年ぶりとなる高麗屋三大襲名が再び行われることとなる。本書で取り上げる九代目松本幸四郎が父の最後の名前である松本白鸚(まつもとはくおう)の二代目を襲名し、七代目市川染五郎が十代目松本幸四郎に、そして四代目松本金太郎が八代目市川染五郎にそれぞれ襲名する。その襲名を1年後に控えた今、九代目松本幸四郎はどのような足跡をたどっていったのか、そして二代目白鸚になってからどの […]

恋づくし – 宇野千代伝

元々私自身は宇野千代という人物について名前以外は知らなかった。しかし今から6年前の秋に「私のおとぎ話」という本に出会ったとき、ようやく人物・本に巡り合うことができた。元々寡作だったこともあり、作品自体になかなか出会えなかったのだが、犯罪以外様々なことに手を出した姿から、その経験や教訓を童話にしたためた作品は、今まで童話をいくつか読んだことのある私にとって身震いするほどの感動を覚えた一冊である。 本 […]