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遺作

その果てを知らず

著者の眉村卓氏はSF小説を長らく描き続けてきた。その眉村氏の最期の一冊と言えるのが本書である。60年以上前にあるサラリーマンが小説の道を歩み出し、SF小説を描き始めた。やがてサラリーマンを続けながら作家人生を歩んでいった中で彼は何を見いだしたのかを描いている。 もっとも本書は「自伝的小説」とも言えるものである。主人公や境遇こそは架空であるものの、著者自身も元々は大卒後サラリーマンとなり、その中でS […]

眼球達磨式

本書の著者は本作でデビューし、第58回文藝賞受賞を果たしたが、同年10月に事故で逝去した。そのためデビュー作であると同時に唯一世に出た作品となった。また本書の上梓自体も昨年11月を予定していたのが今年の3月に延期となるなど、違う方向で話題となった。 さて本書の物語はある種SFの要素も入っているような感じである。とある移動式カメラがコントロールから外れて自走することから物語が始まる。狭いアパートの所 […]

ラスト・タイクーン

フランシス・スコット・キー・フィッツジェラルド(以下:フィッツジェラルド)はヘミングウェイやフォークナーと並び、20世紀を代表するアメリカ文学の作家の一人である。代表作として「グレート・ギャツビー(華麗なるギャツビー)」がある。 そのフィッツジェラルドが1940年に逝去するのだが、その最後の作品であり、未完の作品であるのが、本書である。フィッツジェラルド自身は途中まで描き、またプロット自体は最後ま […]

黄金夜界

著者の橋本治氏の最期の一冊である。なぜ「最期」と記載したかというと、本書を描き終えた後の2019年1月、肺炎のためこの世を去った。橋本氏は言うまでも無く作家として、さらには評論家として多芸多才に富んでいた。 本書の話に入るのだが、元々明治期のベストセラーに尾崎紅葉の「金色夜叉」がある。最愛の恋人を奪われ、その怨恨から高利貸しとなり、復讐を行うというものである。それを現代版にアレンジしたのが本書であ […]

無冠の父

著者である阿久悠氏は2007年に逝去された。彼の母校である明治大学に著者の記念館を開設するにあたり、遺された品の中で見つかった「未完の作品」がこの「無冠の父」である。ただ、本書の作品は一度も陽の目を見なかった。1993年に執筆したのだが、校正の際、編集者と対立してしまい、以降お蔵入りとなったのだという。にもかかわらず本人よりも遺族の了承で刊行されたのだが、果たして勝手に校正されたのか、そのままの状 […]