反貧困―「すべり台社会」からの脱出

貧困に対して様々なことを糾弾している。著者は今の世の中を「すべり台社会」と言っている。「すべり台社会」とはいったん足を滑らせたらどん底に転げ落ちてしまうことである。格差社会についての本は今までに読んできたものの、本書はちょっと違った手について言及している。「生活保護」と「貧困ビジネス」である。

生活保護についてはいかに厳しいのかという体験談をもとにして書かれている、現在日本政府は生活保護の水準を厳しくし、生活保護の額も減らそうとしている。さらに消費税増税などの論議もあり貧困に対して厳しい社会になっている。さらに貧困ビジネスは日雇い派遣の実情とまさに芳崖といわれるような扱いには驚いた。

「貧困は自己責任」という主張も退ける内容はあり、共感できる部分はあったものの意見が非常に偏っているように思えた。確かに東洋経済でのインタビューにおいて奥谷禮子氏の発言は暴論としか言いようがないが、自分に対する向上心がないという絶望感があるからでこそ貧困や格差が増えているのではないかということさえ思ってしまう(それがあっても下流に落ちてしまう人は現にいるが)。