論壇の戦後史

戦後の日本には「悔恨共同体」いうものがあったことはご存知であろうか。私はそれまでこの名前すら知らなかった。では悔恨共同体と一体誰が集まってどのようなことをするのかと言うかと言うと、まずこれが日本における戦後論壇の原点になったという。ちなみに政治思想で有名な丸山眞男をはじめ多くの思想家、そして論壇に立った者が集まった。そこでは今後の政治・経済・社会・文化について研究をおこなわれていたという。

本書はそこから始まり、やがて「世界」など今でも店頭に並べられている様々な週刊誌や月刊誌による論壇がどのように変わったのかを綴っている。

第1章では前述の「悔恨共同体」に関すること。第2〜3章では「世界」が創刊した時代から津田左右吉と丸山眞男の対立まで書かれている。戦後と言うことなので週刊誌の先駆けだったのがリベラルである「世界」と言うのは皮肉であっただろう。第4〜6章はそこから60年安保闘争まで。7章以降では高度経済成長から「朝日ジャーナル」までのことが書かれている。終章と補章では「世界」と思想が相対する「文藝春秋」に関することが書かれていたが、私自身どちらかと言うとこっちの紹介ももっとしてほしかったように思えた。

しかし今では当たり前にあるような論壇誌も戦前にも当たり前にはあったが治安維持法などによる弾圧を受け次第に日本人は活字を渇望していた。新聞もあったがそれでは飽き足らずもっと深いところをとらえたものが読みたい。そんな思いから論壇誌が生れ、今では右左問わず様々な論壇誌が生まれたのである。そういったことに対して私たちは情報をもぎ取りながらも取捨選択をしていくというのが私たちの使命なのかもしれない。