合衆国再生―大いなる希望を抱いて

今年11月に行われるアメリカ大統領選で初の黒人大統領を狙うバラク・オバマの自伝である。
本書の表題からしてオバマ自身の政策及び思想が盛りだくさんであった。しかしちょっと気にかかるのが本書の総扉を1枚開いた所には祖母と母への愛情が書かれていた。本書の中身もさることながらオバマの製作の構想の根幹がこの2人の女性によって支えられたものかも知れない。

印象に残ったところをピックアップしてみる。第1章では二大政党制による弊害について書かれいている。実際にアメリカの議会ははっきりとした二大政党制である。アメリカに限らずイギリスでも労働党と保守党による二大政党制である。それによって国が2分されたと批判している。実際アメリカの大統領選でも共和党対民主党となるが、その中で政策についての討論もあるし、逆にネガティブキャンペーンも行われている。

二大政党制であればどっちの政権にするかという選別も簡単になる反面、上記のようなことも起るのだという。日本は他政党制であるが実質二大政党制もどきになっているとも言える。しかしアメリカとはっきり違うのは超党派による協議も最近では多く行われている。対立するところは対立しながらも、協力できるところは協力していく。しかし「談合政治」という声もあるが、実際政治というのは「妥協の産物」の如くそのように成り立つのではないだろうか。

第7章では人種問題を扱っている。ここでは「公民権運動のヒロイン」とも言われたローザ・パークスを中心に多くの人種差別問題についてオバマなりの見解について書かれていた。実際アメリカほど多くの民族と共存している国はない。しかしその中で経済的、精神的な差別を受けている人種・民族もいくつかある。

オバマその格差を是正するための平等政策をマニフェストの1つとして挙げているが、それについて批判している論客も少なくない。最近ではある雑誌にて経済学的にオバマの経済政策は破滅に導くというコラムがあったほどである。実際やってみないと分からないことであるが、はたしてかつての日本にあった「1億総中流」ならぬ「アメリカ総中流化」というのをオバマは成し遂げようとするのだろうか。もしそうなれば見物である。

オバマの政治力というのは未知数であり、政策についても疑問視することもある。しかし「もしオバマが大統領になったら…」という考えも捨てきれない。11月には新しい大統領が決まる。いったいオバマ・マケインのどっちが大統領になるのか、それによってアメリカがどのように変わっていくのかも日本は注視しなければならない。