反空爆の思想

「空爆は戦争終結を早め、死傷者の数を少なくする」

本書のカバー裏にこう書かれている。ちなみにこれ爆弾を投下する側の人間の論理である。簡単にいえばアメリカの論理といっても差支えない。実際この論理はそうかと考えると大空襲により多くの尊い命を失った日本にとっては間違っていると言いざるをえない。確かにこの論理からすると「死傷者は多く出るものの、それだけ国の士気を低下させ、戦争終結に持ち込ませる」という考えになるだろう。

でもわたしが間違っているというのはそうではない。東京大空襲から見てわかるとおり死傷者の数を少なくするという論理は完全に破たんしていると言っていい。罪のない日本の弱者20万人を虐殺した、それだけではなく原爆により広島、長崎を壊滅的な被害をもたらせ延べ30万人の命を奪ったと考えると、少なくするというは明らかな暴論であると言えよう。

本書ではそういった空爆思想を解体し批判する1冊である。様々な空爆について批判的に語っているが、日本も空爆を行っていたことは事実である。空爆というと特攻もその一つとしてあげられるが本書ではそれの違いについても書いてほしかったように思えてならなかった。とはいえ「人はなぜ空爆しようとするのか」ということが解明できてよかったと思える。