勝間和代の日本を変えよう Lifehacking Japan

ビジネス本でも大人気の勝間和代氏が日本の未来の為の提言を残した1冊である。ちなみに私自身も「フレームワーク術」で書いており、かつ右のリンクにも(無断で)勝間氏のものがあるためこれは買うしかないだろうという幹事で本書を購入。

全体的な内容であるが格差やワーキングマザー等が大半を占め、若者の貧困からポスト資本主義にいたるまで書かれていた。

第1章「若い人が暗い国」であるがここでは最近のビジネス本ブームについて、そして日本のビジネスのあり方などについて取り上げられているところが目に付いた。ビジネス本ブームは書評ブログを見てもamazonを見てもランキング上位にあるもののいくつかが勉強法に関する本である。

私自身も勉強本について書評は行うが、私自身勉強本については完全否定するつもりはないが、確かに効率的にかつ最大限の生産性については行うべきであるが、それ以前に日本人というアイデンティティの観点から見たら自分の幸福だけ求めればいいのかというと疑わしくもなる。

ただもう一つ言えるのは高度経済成長からモノの豊かさを求めるため日夜励んで仕事に勤しんだ世代だが、すでにものは飽和状態にあることから今度は心の豊かさを求めて効率的な勉強法を見つけそして勉強し、残業もせずに自分の時間をつくり、仕事では手に入らない心の価値を高めることに勤しむ。

これは時代の流れなのでしょうがないが、では効率的な勉強法を学び自分のための時間をつくり、そして自分の幸福を求められればいいのかという疑念が生じてならない。それが今の若者が求めることだろうか。

第2章はワーキングマザー対談で西原理恵子氏との対談であったがこれはなかなか面白かった。ワーキングマザーとしての問題だけではなく、若者の貧困や勉強ブームにまで突っ込んで対談されていた。最後は西原氏の「勝間さんとわたくし」は必見。お見事としか言いようがなかった。

第3章はワーキングマザーなど働く女性の在り方について書かれている。日本は北欧に比べて女性の働き口というのは少ないというのは事実である。さらに日本で働く女性が増えていることも事実である。しかしそれにより既婚率、出生率など低水準にある。さらに女性の立場というのはだんだん良くなっているものの著者のおっしゃるように女性・男性共々家庭を持つべきというのは賛同できる。

ところが現実はそのようなことができる時間というのがなくなってきている、もしくは結婚の願望が淡白になっているのではないのかと考える。晩婚化も進んでおり、家庭を持つことによって働く時のリスクを考えると、後ろ向きになってしまう。育児休業など福利厚生については改善されているが、しっかりと行使されているかとみるとそうではない。家庭を持つこともリスクを軽減させるシステムを作り、それを容易に行使できることが求められるのではないだろうか。

第4章では雨宮処凛氏との対談。雨宮氏なので当然テーマは「貧困」である。若者の貧困についてはいくつかの雨宮氏の本で紹介しているので参照されたいが、ここで勝間氏もかということがあった。某TV局に出演したときあまりに杜撰な議論の持って生き方に怒ったという。これについて番組等は違えど同じ被害にあった評論家の副島隆彦氏を思い出した。まさにあの放送局はどうしようもない。とは言っても在京キー局はこんな傾向が多い。こういうTV局の醜態が見えるような場面であった。

第5章は勝間氏自身が肌で感じたNYでのポスト資本主義について書かれている。ここで勝間氏は若者の事情についてこう書いている

「アメリカの若年層の閉塞感は、日本の若者層のそれよりも小さいのです」(p.215より)

アメリカでは自由の国だけありチャンスは残っているという希望がある、本書で書かれているような大規模な階級移動があるという。これはアメリカ・日本双方の歴史から見ていくといいかもしれない。日本は武士の時代でも階級があった。しかし明治維新により階級意識は薄くなった、悪く言えば中途半端になった。アメリカはそういった概念はほぼなかった。そこに起因しているのではないだろうか。

さらに著者自身の試みでChabo! というプログラムがあるという。これについては非常に興味深い。ぜひ内容を見てできたら協力しようと思っている。

最後に勝間氏が日本を変えるための15の提言をしている。その中で気になった箇所をピックアップしていく。

1.1人でも多くの人が投票しましょう
これはまさにそのとおりでこれから来るであろう衆議院解散総選挙は本当に日本の未来を左右する選挙である。1票だけで政権交代があるのかどうかというのが国民に委ねられる。1票によって政治が変わるというのは民主主義体制で国民に与えられた権利である。それと同時に私たちは政治に関して大きな関心を持つ義務がある。

14.もっと予算を使うことで公教育を充実させましょう。
その通りであるが今の文科省や日教組ではこの公教育の充実は図れるのだろうかという疑いはある。しかし大阪府の教育の特別顧問に就任された藤原和博氏の教育方針が成り立てればこれ以上のことはない。

本書を読んでの感想であるが、全体的には賛同半分、反対半分と言ったところである。日本の労働状況を変えるのであれば勝間氏の意見はほぼ賛同である。勉強本ブームも頷けるが、しかし今の労働状況というのは若者に関しても暗い印象でしかない。経営等の上層部の短絡的な効率化によってそれの割を喰らっているのが若者層である。

若年層に対して明るい社会を成し遂げるには効率化であると共に、日本に生まれ育ったことに誇りを持つという精神・思想面からの目覚めというのも必要なのではないのかと思う。著者は環境に対しては柔軟に対応するというが果たして環境とはどのような環境なのか。そして実利が伴うというが、その実利というのは形があるものなのかというのも問いたくなる。

そして明るい未来というのは何なのか。今の提言でどのように明るくできるのかというのを問いたくもなる。しかしそういう「?」があるからでこそ日本が明るくなるもう一つのカンフル剤ができるのかもしれない。