世界の貧困問題と居住運動

貧困問題についてもいくつか取り上げられているが、今回は少し貧困の中でも居住運動に目を向けてみる。家がないという貧困も少なくない。日本でも「ネットカフェ難民」や「マック難民」というのが取り上げられているが、それと比にならないほどである。お金もなければ働く当てもない。日本のようにネットカフェやマクドナルドのファーストフード店もない。本当に外が家であり、青空のもとで生活を過ごすという人たちである。本書はそのような現状とそれらに対してどのような住宅供給をさせているのかについて迫っている。

第1・2・4章についてはいくつかの文献で紹介したものなので割愛させていただく。本書の紹介としては第3章以降がふさわしいだろう。

第3章「政府による貧困層のための居住プログラム」
政府主導で居住の供給を行っている事例を取り上げられている。おもにインドの住宅都市開発会社やスリランカの百万戸家屋プログラム、アルゼンチンの地方自治体支援する相互扶助などである。政府主導でこれほどやっており、市民もそれをよく活用していることであると思う。国際協力として貧困というのは日本でも考えるべき一つの課題といえるだろう。

第5〜7章では基本的に住宅の紹介といったところである。実際に貧困で苦しんでいる人達のための住宅提供であるところから非常に廉価でつくられている所には驚きを覚えた。

最初にもいったが貧困の中には帰る場もない人たちもいる。その人たちに最低限の衣・食・住を提供して挙げることもまた人権なのかもしれない。貧困問題は人権問題とイコールする人もいるが、私は「≒」といったところである。最低限生活できなければ最低限の生活が担保されないことによる人権侵害になる。しかし貧困の定義は非常にあいまいであり、「心の貧困」というものもある。これは主に富裕層らが占めているが、これは人権問題かというとそうではない。そのことからひとくくりに「貧困=人権」というのはある意味危険な理論になりかねない。余談ではあるがこれだけは付け加えておく。