地域の社会学

昔は「地域」というのを意識しなくてもそこには必ず「コミュニティ(世間体)」というのがあった。その中で地域間で情報交換を行い、子供を育てることでそれをより強固にすることが可能であった。しかしこの「地域」や「コミュニティ」も核家族化、そして他人の興味が薄れてきたことにより薄くなっていった。本書はこういった地域について学問的に勉強していく人たちへの教科書として位置づけられている。

第1部「地域を考える」
始めに出てくるのが「地域」の意味についてである。「地域」を辞書で引っ張ってみると、

(1)区切られたある範囲の土地。
(2)政治・経済・文化の上で、一定の特徴をもった空間の領域。全体社会の一部を構成する。
(3)国際関係において一定の独立した地位を持つ存在。台湾・香港など。(goo辞書より)

となっている。しかしあくまで「辞書で調べた結果」であることを付け加えておく。では本来の意味合いはどのようであるのかということになる。私自身のイメージでは「生活圏」にかかわるのではないかというのが考えられる。「生活圏」というのは普段私たちが買い物に出かけたり、井戸端会議を行え、さらに子供であれば友達と遊び、学ぶことができる区域のことを指しているのだと私は思う。要するにごく当たり前の生活ができる区域を表し、その中で助け合いなどを行えるということを「地域」というのだろう。しかし今日の生活事情はそうではない。核家族化が進み、近所への関心も薄れ、「コミュニティ」という概念が崩壊しつつある。しかしこの「地域」や「コミュニティ」が注目しされ大切なものになっている。医療問題にしても、教育問題にしてもそのプロフェッショナルが精力的に働いただけでは根本的に解決に至ることは難しいように考える。とりわけ医療問題に関してはその最たる例と言えよう。特に「兵庫県立柏原医療病院」の小児科医に関しての患者の親たちの協力により石の負担をなるべく減らそうとする運動については地域、コミュニティの観点から解決できるのではないのかとも考える。今こそ日本がかつて持っていたコミュニティ精神というのを復活させるべきではないか。

第2部「地域を見る」
昨今の地域の現状について書かれている。とりわけ未婚率や核家族世帯数の増加は顕著である。さらに非正規雇用の急激な増加により、働いても最低限生活できない世帯も増えている(「生活保護」を受けている世帯も同じく増えている)。さらにニートや引きこもり、非行、校内暴力、家庭内暴力と言った子育てに関する問題、商店街に関する問題について地域社会に関する問題は山積している。その背景にあるのは「利益至上主義」や「個人至上主義」にあるようだ。また高齢者問題に関しても「地域」や「コミュニティ」というのは切っても切れないものである。それらの協力がないと老人1人で「孤独死」ということになりかねないのである。今や高齢化社会、個人化社会になっているからでこそ、「地域社会」や「コミュニティ精神」といった昔当たり前だと思っていたことを見直すいい機会であるように思える。

「地域」というのは定義はあいまいであるが、国語辞典で書かれている以上にもっともっと地域に関する意味合いというのが大きい。今日消費者にとって悩まされている問題も地域ぐるみで解決できる手段はもしかしたらあるのかもしれない。そのことを念頭においてこれからの「地域」に関する議論が活発になればいいと私は思う。