予兆発見 百の小話―デジタル・ネット家電で身の回りはこう変わる

例のやつがどうやら調子が悪いみたいなので今回はこれで我慢することに。
本の表紙から見るに「小話」というよりも「小咄」という表現のほうがいいのではと思った。表紙からして落語だろう。

それはさておき、IT化が著しくなったこの時代であるが20年前にこれほどのIT化を予想した人、もしくはそう考えた人はいたのだろうか。おそらく誰もいないだろう。証拠とは言わないが、手塚治虫の「鉄腕アトム」は21世紀の日本について描いていたが、これほどまで露骨にハイテク化にならなかった。一方で「アトム」では電話が黒電話だったのに対し今では携帯電話がもう1人1台といわれるほどまで進化を遂げた。さてこれほどまでに急激にIT化してきたわけだが、今後どのようなことが変わるのかについて小咄にしたのが本書である。
いくつかピックアップしてみよう

第7話「カラオケと知財権」
まず出てくるのが「カラオケ」の語源である。カラオケは和製英語かなと思ったらどうやら違っていて、昭和31年にあるオーケストラの楽団員によるストライキの影響で、松下電器産業(現:パナソニック)がテープ演奏を提供したことから始まる。ストライキをしていたことから「オーケストラ」ピットは「空っぽ」、それにより「カラオケ」となったのである。カラオケは「空っぽのオーケストラ(ピット)」の略字というわけか。でここからがまじめな話。「知財権」ということを絡んできていることか、このカラオケ以後著作権問題が活発化していることは周知の事実である。最近では動画共有サイトがJASRACに著作権料を支払うことで決着がついたというものがあるが、著作権関連のことでまだまだ課題が山積していることは間違いない。

第14話「ITと新日本語」
「最近日本語が乱れている」という人が多い。しかしこれは今も昔も変わらないことである。そもそも日本語の変化というのはめまぐるしいと考えると乱れているのはいいことかと思うのだが、IT化や戦後日本文化の崩壊によるものが顕著ではなかろうか。

第47話「新聞休刊日も良いが、テレビ休報日とネット休信日は?」
こういうのもあったほうが良いかもしれないと思った。だがネットについては毎年2月か3月に1日だけパソコンをやらない日という催しがあったのだが、これが広がれば「ネット休信日」というのは始まるのではないかと考えられる。

第56話「IT教育はコミュニケーション教育である」
まさにそのとおり。IT業界やITにまつわるものについてはメールやチャットなどのコミュニケーションが肝心である。IT化によりコミュニケーションがはく弱化したことによるものなのかもしれない。

第85話「動物とITはどちらが役に立つのか」
地震に関しては動物の本能が正確といって良いだろう。緊急地震速報が導入されたが、正確化というとそうではない。もっというと台風や津波などの災害で動物は強い。水牛やカバが津波によって死んだという例がほとんどないという。それだけではなく、地震の予兆として動物の行動によりわかるということをTV番組で知った。そのことを考えるとITにより正確に測れるのは非常に難しく、むしろ動物の本能のほうが正確であろう。ちなみにそういった本能はもともと人間にも備わっていたが、心の豊かさと同様にモノの豊かさによって失われた。

IT化はまだまだ行われることだろう。しかし全部が全部IT化することができない。例えば緊急地震速報は完全に予知することは不可能といってもいい。もしその余地ができたとしても未然に災害を防ぐことができるのかというとそうではない。ITの進化は止まらないが、この時代にこそ必要なのが「コミュニケーション力」や「人間力」、そして「足るを知る」力なのではないかと私は思う。