もう一席うかがいます。

当ブログの名前は落語の演目から取っているので、たまにはこういうものもということで。
三代目古今亭志ん朝が亡くなって7年経つ。本書は志ん朝が亡くなって5年経って出版されたものである。志ん朝が亡くなってしばらくたったの笑点で林家木久蔵(現:林家木久扇)がこんな短歌を詠った。

「いままでに いったいどれだけ 寄席見たか もう見られない 志ん朝の芸」(「笑点」2001年11月放送分より)

おそらく多くの噺家やファンはそう思ったのだろう。私自身も落語に興味を持ち始めたときであった。だんだん知るにつれて五代目古今亭志ん生の次男としての重み、昭和の名人の一人であった八代目桂文楽から「(三遊亭)圓朝を継げるのは志ん朝しかいない」とも言われたこと、そしてそれにその声に応えるに十分な名人芸があった。ファンはいまでも志ん朝の出囃「老松」が流れると「いよっ!矢来町!!」と言った言葉も飛んでくる。

さて古今亭志ん生の話が出てきたことからちょっと志ん朝について話してみると、「五代目古今亭志ん生の次男」と言ったが長男はと聞かれるかもしれない。ちなみに長男も噺家で「十代目金原亭馬生」という大名跡である。本書で出てくる「十一代目(前名:金原亭馬治)」もその弟子の一人である。また俳優の中尾彬の夫人で女優の池波志乃はこの馬生の娘である(志ん朝から見たら姪にあたる)。ちなみに「十一代目」を推した最初の一人が偶然にも中尾彬であるというのは私自身も驚いた。

本書は十一代目馬生を含め全部で12人とそれぞれ対談したものを1冊にしてまとめている。志ん朝の人生と趣味嗜好について、そして誰も知らなかった志ん朝の素顔も明かされている。