経営戦略の基本

昨年秋から世界恐慌に陥り、派遣切りやリストラ、内定取り消しなど日本における雇用状況はますます不安定になっている。「失われた10年」の教訓もあってか厚労省や地方では職を失った人たちへの就職先の斡旋や、民間と通じて無料,もしくは安価で住まいを賃貸したりなどさまざまな手を打っている。このことについてはまだ手が尽くせていないところもあるが、まだ手は打っているといってもいいかもしれない。

一方で企業は…と考えると、策を練ってはいるもののほとんどの削減の矛先が人件費,もしくは経費の削減ばかりに集まってしまう。もっとも「実感無き好景気(いわゆる「戦後最長の好景気」)」の時にはあまりにも輸出関連の品目がとぶように売れるため、イマまでの雇用では追いつかず、派遣労働法ができたことにより派遣として迎え入れることにより生産を向上させた。その反面「格差社会」というのが形成され、「ワーキングプア」や「貧困」ということばさえ出てきた。これは日本経済、及び大企業の経営者たちの労働者の層への関心の薄さによるものではないかと思う。

資本主義・新自由主義によるものではあるにせよ経営に関する知識はどの層も把握はしたいところ。そこで本書である。本書は経営戦略という分野の基礎を学べる1冊である。経営戦略というと大学の経営学を専攻する人や大学院ではMBAを取得しようとする人だけのもので私たちはあまり関係ないのではないかといわれるかもしれないが、雇用状況や企業の状況が把握しきれない今だからでこそ、経営に関する基礎がわかっていれば、明日倒産するかも知れない、もしくは今日からこの会社の舵取りをやってくれないかという…極端すぎるかもしれないが会社の従業員は経営者目線や顧客目線、自分達の目線を使い分けながら行動を行う。その一つの手段としてこの経営戦略というのを学んだほうがいいと思っている。中身はよく見る入門書よりも噛み砕いてかかれているので、経営を専攻する人意外でも用語さえ気をつければすんなりと身につけるようにできている1冊である。

第1章「経営戦略の役割と特徴」
経営戦略とは一体何かを紹介している。経営専攻の方である程度わかっている人であれば読み飛ばしても構わない。

第2章「経営戦略の理論を俯瞰する」
第1章からもっと深く入り込んで経営戦略理論について書かれている。ここでは用語が多数出てくるので初心者の方にはここだけで骨の折れる内容だと思う。

第3章「戦略を動かすための仕組みづくり」
ここでは組織や戦略そのものにおける仕組み作りについて説明されている。目標達成に向けてのPDCAサイクルなども紹介されている。

第4章「企業全体のパフォーマンスを向上させる全社戦略の実践」
さてここからが実践である。ここではマクロ、すなわち企業全体の経営戦略を円滑に進めるための実践について書かれている。

第5章「個別事業の競争優位を構築する事業戦略の実践」
こちらはミクロ、企業が持っている事業単位の分析方法を紹介している。分析方法が全部でプレ・現状合わせて8つあるため、いっぺんに全部覚えることよりも一つ一つやってみながら覚えていくといいだろう。

第6章「不確実性の時代における“新しい”戦略論の潮流」
これまでは「一般的」な経営戦略について学んでいったが、全ての企業戦略が5章までのとおりで目標達成できたらこの第6章は必要ない。しかし世の中何が起こるのかわかったものではない。特に昨年の状況を見ればわかるだろう。そのときにこそこの第6章が役に立つ。