聴き上手

コミュニケーションにおいて「聞き上手」と言うのは重要なことである。では話を正確に聞き取ればそれでいいのかと言うと、「聞き上手」と言うのは甘くはない。「きく」と言うのは漢字に変換するだけでも「聞く」「聴く」「訊く」「利く」「効く」とある。

本書では今変換した「きく」と言う漢字の中から前者3つのことについて書かれている。ただ前者3つを応用して「利く(気が利く)」と言うことも可能であるのでこういう力は社会一般でも非常に大事なウェイトをしめるだろう。

第一章「私たちにとって聴くとはどんなことか」
本書では日常的な「きき方」について全部で6つに分けられている(pp.18〜19より)。

①聞こえてくる
②聞かされている
③聴こうとする
④聴きとる
⑤聴き分ける
⑥訊き出す

全部「聞く」に統一していないところが本書の鍵になる。①,②の「聞く」は本当に耳で聞いただけで自分の気持ちとは裏腹に聞こえてくる、聞かされているということになる。「聴く」は自分から聞きたいという能動的な意味合いとなる。積極的にヒトの意見を「聴く」と言うのがこの③〜⑤にあたる。最後は、「聴き取った」ものからさらに掘り下げて「ききたい」というときに「訊き出す」、つまり掘り下げられるように質問するというのが必要になる。ここまでくると「質問力」も「コミュニケーション能力」の一つと言えるかもしれない。

第二章「聴くことは多くのメリットをもたらす」
「話し上手」は「聴き上手」と言われる。話を「聴く」ことによってどのようなメリットをもたらすのかと言うのを本章でかかれている。勉強になるばかりではなく、追体験、仲間との調和…と言うような効果をもたらすところを考えるとこの「聴く」ことを学ぶ技術は学ばないわけにはいかない。

第三章「あなたをひとまわり大きくする」
ここも「聴く力」の良さについて書かれている。正しいコミュニケーションを行うことによって話を脱線・聞き違いによって生じるタイムロスを防いでくれる。さらに自分が気付かなかったところも気付けるというのがある。

第四章「話しやすい聴き手になる心がまえ」
「聴き上手」のテクニックをいくら教えるにもまず心構えが大事である。とにかく心から「聴く」、意識を集中して「聴く」と言うのが無ければ何者にもならない。

第五章「聴き上手になるためのテクニック」
ここでようやくテクニックの話に入る。相手との向かう位置から、相槌の打ち方など結構言葉の使い方と言う気遣いもやらなければとも思ったところであった。

第六章「なぜ聴き違えが起こるのか」
「聴き違え」は私の中でもかなりある。もちろんコミュニケーションの中で直しておきたいところだが、いまいち原因を特定できないでいた。しかし本書を読んでそれを特定することができた。私がコミュニケーション不足となった、コミュニケーションの向上の障害となったのは、

「慢性拒否症」

と言うものだった。そうなったものの理由として討論番組の見過ぎであったり、当ブログでの書評において批判的に取り扱ったりするなどがあった。それが癖になってしまってこういったことになったのだろう。この性格を改めることを今年の目標にしよう。いろいろと迷惑になりそうだ。

第七章「真意をつかむ聴き方をしよう」
相手の真意はメモをとることとされているが、私自身はコミュニケーション能力向上のためにメモをとることを日課にしている。自分の与えられた仕事、言われたこと、学んだことを全てメモにしてノートに写している。そのことによって度忘れを防いだり、繰り返し聴かれることが無いようにすることを自分でやろうと思ったからだ(やり始めたのはほとんど思いつきだが)。
真意をつかむ聴き方であるが、よく大臣や企業の幹部の失言をメディアは取り上げる。しかしその前後の発言を見てみると完全に正論である発言がほとんどである。メディアこそ「聴く力」を身につけるべきではと思ったが、いかんせん面白がることや官僚体質を抜け出せなければ意味が無い。

第八章「訊き出すための努力」
「コミュニケーション力」の中でももっとも難しく、それを見につければ敵なしと言うようなものが「訊く力」、すなわち「質問力」であろう。相手に気持ちよく話してもらえるのが「聴く力」とするならば、その話をもっと深く話してくれることが「訊く力」である。

第九章「訊くときに気をつけたい質問法」
「訊く」にも当然気をつけることがあるが本章ではそういった質問法について説明している。質問は時と場合、そして話して欲しい内容を間違えると後で取り返しのつかないことになってしまう。

話をうまくするためのコミュニケーション術はあれど「聞く」と言うことを徹したコミュニケーション術は珍しい。コミュニケーションで口ばかりがうまくとも、相手の歩調を合わせるために人の話を聞くことが大事であり、よく先輩方や親からそういうことを口酸っぱく言われているのにもかかわらず出来ていない人が多い。そういうことを考えると、こういった「聞く技術」を身につける本はこれから増えていくべきではないかと思う。