石油の支配者

今は世界恐慌の煽りを受けて落ち着いているが、そうなる前までは原油高の高騰が深刻な問題として挙げられた。近くのガソリンスタンドでは1リットルあたり180円台後半までいったほどである。

本書は原油生産に関する政治的な駆け引きと、原油高の高騰の元凶とメカニズムについて迫っている。

第一章「原油価格高騰の真相」
半年前であったか、石油に関して営業を行っている人と呑む機会があった。その時に原油高の高騰について過剰に投資を行ったことによって卸値が暴走し、コントロールが利かなくなった事で起こったという。本書ではこのような暴騰の元凶は投機筋だとしている。

第二章「石油世界地図の読み方」
この章の最初に世界地図が載っているがこれは石油がどの国(地域)に売買されているのかを表している。その規模は1京7000兆円にも上るという。その投機筋の正体についても言及しているがあまりにも衝撃的なのでここで書くのはよしておく。知りたければ本書を購入するほかないだろう。

第三章「原油高騰と世界危機を結ぶ見えざる糸」
ここまで原油が高騰した、その要因はアメリカによる横暴への反発よるものだという。

第四章「石油はいつまでもつのか」
皆さんは原油は有限か無限かと問われたらどちらを選ぶか。現状では有限だという人が多いだろう(ハーバード博士の「ピークオイル説」が有名)。しかし蓋を開けてみると、有限説・無限説とも有力な証拠が無い。ましてやその論議でさえ政治的な要素が絡んでいる。その中心にいるのがロシアである。その証拠となっているのが1980年代に旧ソ連で行った枯渇油田の再開発にある。

第五章「石油埋蔵量データはインチキだ」
ニュースで原油の貯蔵量が発表される(「IEA(国際エネルギー機関)最新データ」と言われているもの)が本書によるとこれにはカラクリがあるという。ではこれはどこから出てくるのか。「大本営」とされているもの、もっと言うと国営石油会社がデータを独占して、メディアに流している。つまりここで言われているのは安易にメディアで出てきた情報を鵜呑みにするなということ。

第六章「原油をめぐる「熱戦」のはじまり」
ロシアと中国。本章では両国にスポットを当てている。
まずロシアであるがプーチン政権以降資源を有効に使い超大国として名乗りを上げた国である。本書では昨年8月に起こったロシアによるグルジア侵攻の背景についても言及している。イラク戦争と同じ石油がネックになっていた。
次は中国である。こちらは資源はロシアに比べ、それほど多くはない。だが東シナ海(尖閣諸島など)では日本とアフリカ大陸ではアメリカと争奪戦を繰り返している(特にナイジェリア)。

第七章「「京都議定書」なき日本の失敗」
今、日本は「京都議定書」における二酸化炭素排出量削減目標を達成するために躍起になっている。活動において私は否定する気はないが、京都議定書が締結した政治的要因については否定する。本章を読んでその色がさらに濃くなった。京都議定書はアメリカの会計会社「エンロン社」によるものであるという。エンロン社ときて思いつく人もいるだろう。エンロン社と言えば2001年巨額の不正経理を行い2002年に当時アメリカ史上最大の企業破綻をした。後に会計や投資に関する法律「SOX法」がつくられるきっかけとなった会社である。

第八章「いかに第四次オイルショックに対応すべきか」
原油の高騰に終始した「第三次石油ショック」が終わった。政府の対策は行われたとはいえ単なる付け焼き刃に過ぎなかった。今度また石油ショックが来るのかわからない。政府はこの事を教訓にして、シミュレーションなどの戦略を講じるべきなのは著者と同意見である。しかし、戦略を立てても国民の抗議に弱く、コロコロと政権が変わり、せっかく立てた戦略も違った政権が頓挫させては何物にもならない。小泉純一郎のようなカリスマ性があり長期に政権を維持できる人を選ぶことが上記の戦略の第一歩である。