世論調査と政治――数字はどこまで信用できるのか

当ブログでも政治に関しての言及は多々ある。しかし世論調査に関しては私自身はいっさい関心がない、と言うよりは信じていない。世論調査は各新聞社やテレビ局によって数字がバラバラなのだが、局や新聞社それぞれのイデオロギーが見え見えだからである。またそれを「民意」とか「国民の意見」と言うものだから困りものである。それにより首相の意見野党の意見が振り回され、野党はそれを武器にする。常に国民を意識することが民主主義の根幹であるが、その意見に惑わされたのが福田政権や麻生政権であろう。
本書はこのような世論調査の仕組みと現状、そして世論調査の変遷について考察している。

第一章「世論調査はどうやって作られているか」
世論調査は内閣支持率や政党支持率ばかりではなく政策に関しての支持も含めると結構多くの質問項目で成り立っている。局や新聞社はなるべく国民の声が聞くことができるように細かな質問項目や答えやすいような質問項目を設定しているさらに、調査方法もいくつか存在する。有名な方法では、

「面接調査」
「郵送調査」
「電話調査」
「インターネット調査」

と言ったものがある。

第二章「吉田内閣から、麻生内閣まで、内閣支持率物語」
こちらでは歴代首相の支持率動向からどのような状況だったのかというのを考察しているところである。巻末には朝日新聞の統計開始から本書発売までの内閣支持率の変遷がそのまま載せてあるのでこちらも参考に見たほうがいい。

第三章「小泉内閣から支持率の注目度アップ」
支持率と言うのが如実に意識され始めたのが小泉内閣になってからである。小泉氏が首相に就任しての最初の支持率が78%ほどにまで伸びた、その勢いは衰えることもなく8割上げると言ったフィーバーぶりであった。田中眞紀子の外相更迭以降は大きく落としたものの、6年にわたって支持率を安定的に維持してきた首相も珍しいほどであった。小いずみ市の政策はほとんど国民の目を意識せずに自分が行おうとしている改革に邁進していったことが大きな要因であったように思える。

第四章「政権交代が見えてくる政党支持率」
世論調査と言うと首相の支持率ばかりではなく政党の支持率についても公表される。ここでは政党支持の意味合いや政党支持の変遷について書かれている。

第五章「選挙情勢調査の舞台裏」
今年は衆議院解散総選挙がある。この前にやった国政選挙はさかのぼってみると一昨年の参議院通常選挙である。内閣の閣僚の事務所費などが浮き彫りとなり、首相・自民党の支持率が芳しくなく、その不支持が民主党の支持に流れたという構図であった。結果は自民党の大敗。民主党が第一党になり、与野党逆転の「ねじれ国会」となった。この選挙では自民が負けるというのは大方予想通りであったが、自民・公明の与党が過半数割れするのはこれについて予想できた人はあまりいなかっただろう。選挙情勢で与党が勝利するか敗北するかというのはあくまで予想。選挙になってみないと分からないというのが事実であろう。

第六章「世論調査にどこまで信を置くべきか」
いま日本の政治は世論調査に冒されているという考えも捨てきれない。だが、国民がこう答えているのだからという論理も通じる。そのことを考えると「民主主義」と言うのは何なのかという疑問に行き着く。国民主権であるので世論の流れをくみこむのは必須なのか、あるいは自分が推し進めている政策を捻じ曲げずに国民に納得するために選挙を行うべきなのか(「郵政選挙」といったもの)と言うのもまた考え所であろう。ともあれ世論調査は国民の声の一つであるが、それを批判材料としている野党やTV局、新聞社がリテラシーを持っているのかと言うと首を傾げてしまう。本書の最後にも書かれているとおり、世論調査は必要であるが、

「マスメディアこそ高いリテラシーを」(p.215より)

これに尽きるだろう。