食料自給率のなぜ

現在日本の食料自給率は40%である(カロリーベース)。先進国の中でも最低の数字である。残りの60%は当然輸入に頼っていることになる。今では円高により輸入品は安く手に入るようになったのだが、「戦後最長の好景気」と言われた時は原油高の高騰などにより食品などが軒並み値上がりした。さらに異常気象も頻発しており事あるごとに影響を受けやすい。さらに経済は「世界恐慌」という非常事態であり、オバマ政権が「スーパー301条」を振りかざしてくる可能性も無きにしも非ず。本書はなぜ食料自給率が落ちたか、そして食糧自給率を回復させるにはどうすればいいかということについて書かれている。だが著者は農水官僚。官僚の書く分だから信用できないという人もいるかもしれないが、ここではそんな偏見は無視してみていく。

第一章「食料自給率四十%の実状」
「食料自給率」を算定するには2つの方法がある。一番最初に書かれた40%が生産熱量を基準に書く「カロリーベース」。もう一つが生産額をベースにして計る「生産額ベース(金額ベース)」というのがある。ちなみに日本における後者の自給率は66%である(2008年現在)。また地域別(47都道府県別)に見ることのできるものもある(農水省HPより)。2006年の概算値だがカロリーベースで最も高いのが北海道の195%、最低は東京都の1%である。これに対し生産額ベースでは最高が東国原知事の御膝元、宮崎県の256%で最低はこれまた東京都の5%である(同HPより。ただしページはxlsとなるため注意が必要)。地域によってよいところと悪いところの「格差」というのがあるかもしれないが、土地や都道府県の事情もあるためこれ以上は突っ込まないことにしておく。だが日本の食糧自給率は40%なのだがお隣の韓国では46%(p.36より)である。どれだけ輸入依存をどれだけ取り払うのかというのも石破茂農水大臣率いる農水省の課題と言えよう。

第二章「食料自給率低下がわが国に与える影響」
食料自給率が落ちている反面「肥満人口」が増加しているというあべこべもある。戦後以降の「食生活の変化」というのが大きなネックになっていると言える。だが間違ってほしくないのが、戦前の食生活はよくて、今の食生活が悪いのかというとそうとは言い切れない要因もある。例えば江戸時代では肉類を食すのは仏教によって禁止されており、残るは米と野菜と言ったものしかなかった。江戸時代では米食ばかりによりかかる「脚気」、通称「江戸患い」というのが流行したという話を聞いたことがある。その時は伝染病もあり、それほど医療が進歩していないこともあってか平均寿命は50歳前後であった。しかし肥満であった人はそれほどいなかった。そのことを考えると「肥満は悪なのか」という疑問さえ浮かぶ。

第三章「食料自給率低下が世界に与える影響」
食料自給率が低下しており、大半は海外から輸入していると書いたが、同時に水も輸入しているという記述があった。「エビアン」や「ボルヴィック」と言ったものを大量に輸入しているじゃないかと思ったが、実は「バーチャル・ウォーター(仮想水)」というのを輸入している。ではこの「バーチャル・ウォーター」とは何かというと農産物や畜産物に要した水であり、「食糧の輸入は、あたかも水の輸入のようなものだ(p.71)」というのはこのことである。
さらにもう一つ取り上げなければいけないのが食品ロス率である。農水省のデータによると宴会での食品ロス率(食べ残し量の割合)は15.2%、結婚披露宴ではなんと22.5%にものぼる。そう考えると日本人は食料輸入に依存しているが食品に対する意識が弱白化しているせいか大事にしないという感もある(それがマナーとしてまかり通っているところもある)。

第四章「世界の食糧事情と厳しくなる我が国の食料調達」
現在は世界恐慌により鳴りを潜めているが、世界的な食糧高騰はこれからまた起こるであろう。日本は初苦慮自給率が低いためにそれに敏感になってしまう。自給率を上げるということも急務の一つである。今回ちょっと批判したいのがこの四章の「地球温暖化で減少する世界の食糧生産」である。大干ばつや水没により作付面積が減少するというのが当然の話だろう。だがちょっと待ってもらいたいのが永久凍土により作物ができない地域、たとえばアラスカやシベリアと言った北極に近い地域が温暖化により農業ができるようになる。その面積の増加も加味したら減少というよりも変わらない、悲観的に見ても微減と言ったところである。

第五章「これからのわが国の食料安全保障」
ここからは食料自給率向上のための対策について書かれている。おもに水田の利用が多く、「国産米粉」や「飼料米」という対策が具体的に書かれている。確かに資料や粉に関しての自給率は著しく低い。米を代用すれば自給率が増えるというのはあるが、日本の米は外国と比べても高く(農協などによって統制されている)、飼料や米粉にしたらかなりの額となり手を出さない人もいるのではないかという不安もある。それであるならば中国などのアジアの富裕層に売りつけるという方が簡単な手段であるが。

第六章「食料自給率向上のために、今、できること」
食料自給率低下の最大の要因は「食生活の変化」である。最近ではコメを食べる人が減少し続けている。もう一つ簡単にできることがある。
「米を食べろ」
ただそれだけ。
おにぎりでもリゾットでもパエリアでも…。

いろいろ料理もあるし、食べ方もある。飽きることを考えて1日2食。多くて3食、4食、5食でもたくさん食べると日本の食料自給率に貢献できる。