日本の食卓からマグロが消える日―世界の魚争奪戦

マグロというと日本を代表する刺身の一つとして知られている。私も好物のひとつでご飯と一緒に食べるということが楽しみで仕方がなかった。戦後最長の好景気となった時には原油高の高騰もさることながらマグロの単価も急騰した。先進国の「日本食ブーム」によりマグロの需要が急速に高まった。とりわけ中国ではそれが顕著に表れたという。
本書はマグロ市場の現状について書かれている。

第一章「空前の海鮮ブームに沸く中国」
今世界恐慌により経済的にやや減衰しているとはいえ中国は高度経済成長真っ只中でありGDPでドイツを抜き世界第3位となった。それが食生活にも表れ、日本の食生活を模倣するようになってきた。ご存じであるが中国の人口は日本の人口の10倍以上にも及び日本の食生活に近いものとなると、消費量が尋常ではない。魚のみならず穀物などの食料が枯渇状態になりやすくなるのは火を見るよりも明らかである。

第二章「中国市場を目指す日本の漁業者」
中国の食生活が豊かになりだしたと反比例したのかどうかは定かではないが少子高齢化により本書では「胃袋」が減少したというふうに喩えられているように、米ほどではないものの魚の需要量も減少している。さらに原油高の高騰もあってかさらなる買い控えも出てきた。それに困窮した漁業者はインフレ状態にあるが日本より物価が安いということなので中国市場を目指すという風潮があった。しかし原油高は落ち着いた今では日本の市場に戻っているのかというのは分からない。

第三章「世界一のマグロ消費大国 日本」
第四章「存亡の危機に立つ日本の遠洋マグロ漁船」
第五章「世界でマグロの争奪戦が始まった」
日本は世界一の消費大国といわれており、寿司店でもマグロやトロは大人気のネタである。しかし乱獲により日本のマグロ漁業枠がどんどん規制され、マグロの値段が高くなった。さらに遠洋マグロ漁船も減少しており、輸入に頼らざるを得なくなった。そのことと前述の世界的な需要の増加により日本にマグロが出回る量が減少した。世界的にマグロ争奪戦が起こり日本は劣勢に立たされている。

第六章「中国の国家マグロ普及戦略」
世界的なマグロ争奪戦の渦中に入っているのは中国である。目覚ましい経済成長により世界中から食糧を買いあさっていると言っても過言ではない。日本はその中国の戦略にのまれ始めているのかもしれない。

第七章「日本人の食卓の今後」
今はそうではなくなってきたが原油高高騰だった時は、原料の高騰により様々なものが軒並み値上がりした。その中で買い控えが目立つようになった。では食生活はというと、忙しさのせいか、冷凍食品や惣菜で済ます傾向も見られ、魚の需要が減少しているのは事実である。

マグロは日本人にとってなくてはならないものである。しかしそれが世界的な需要により手に入らなくなることもあるが、日本人による買い控えという悪循環も相まって、日本におけるマグロ需要の減少に拍車をかけるのだろう。ただし、本書が上梓されたのは一昨年のことであり、この2年間で急速に景気が変わった今、マグロの市場はこれまでとは違った変化を見せているのかもしれない。