大企業のウェブはなぜつまらないのか―顧客との対話に取り組む時機と戦略

著者の本荘様より献本御礼。
大企業のウェブについては社内言芸のクローズドなものを除いて就職活動などでよく見ることがあった。最近ではそれほど多くは見ないのだが。

本書は大企業がなぜウェブがなぜ詰まらないのかというタイトルだが、前書きで書かれているとおり「経営書」として経営学的観点から考察し、企業のウェブ戦略としてどのような方法であるべきかを指南している。

イントロダクション「本当の課題――大企業にとって「ネット化」の真の意味とは」
昨今ではWeb2.0ブームである。Web2.0というとMixiやGREEをはじめとしたSNS、YouTubeなどの動画共有サイトなどの「共有」というのが中心となる。著者にとってみれば「バズワード」であるとしている。「バズワード」とは、

「一般専門用語のように見えるがそうではなく、明確な合意や定義のない用語のこと」(p.17)

ということである。つまりこのWeb2.0は明確な表現はなくその幻想に踊らされているとも言うべきだろうか。
大企業ではこのようなウェブを取り入れるというのは様々な意見がある。しかし大企業での経営課題がネットの貢献性にどのようにかかわて来るのかというのはまだ未知数のところがある。それがまだ未知数なのかというと保守体質によりウェブが受け入れられていないというのもまた一つの理由として挙げられる。さらにはウェブを取り入れると言っても企業HPや連絡を円滑に進めるだけの「ツール」でしかないため本来の「ウェブ」の役割を担っていないのではないのかということもある。本書はそういったことにどう立ち向かっていくのかについても述べている。

第一章「現在の地図――冷静にネット化を俯瞰する」
今、ネット普及は急速に進んでいるものの、それに関して肯定的な意見もあれば、懐疑的、もしくは否定的な意見を持っている人もいる。ただウェブを取り入れる人の中には前述のようなツールしか思いつかない人も少なくない。

第二章「ネット化社会――変わる顧客・変わる社会」
少し話が変わる。ここではブログなどのネットコンテンツの増加がいかにして社会に影響を及ぼしているのかということが書かれている。例えばブログでは日本で言う所で、徒然日記がほどんどであるが、時事性に富んだものから書評、あるいは料理のレシピを公開するというものまで網羅されている。

第三章「インパクト――企業にとっての市場変化の意味」
ネットの普及により従来のマーケティングにも変化の兆しを見せている。例えばマーケティング用語で「AIDMA(Action:注意、Interest:興味・関心、Desire:欲求、Memory:記憶、Action:行動)」の法則があるが、これに代わってSearch(検索)やShare(共有)というようなネット特有の購買行動も出てきた。

第四章「限界の訪れ――従来型戦略の問題点と解決の方向性」
既存メディアとの付き合い方だが今回は簡単に書くことにする(本格的に書くとこれだけで終わるような気がするので)。
ネット普及により既存メディアは窮地に立たされている。例えば広告収入はgoogleなどのネット媒体に持っていかれ、最近のTVCMはパチンコか消費者金融が多数を占めている様相である。さらにTVニュースや新聞もそれほど読まれなくなり、ネットで済ますという人も多くなった。しかしこう言った既存メディアは私の考えではなくならない。しかしずっと同じような状態を保つのかというとネットの普及により何らかの形で変化するだろうと思う。

第五章「予兆――大企業のネット化の先行事例」
イントロダクションで述べたが、大企業がウェブを取り入れるということを先立って行っている事例を本章で取り上げられている。

第六章「協調する組織――マルチチャネルの顧客戦略と企業のあり方」
顧客目線でのウェブ戦略の在り方について書かれている。とりわけネットにおけるチャネルと既存のチャネルを組み合わせて行っているところもある。さらにマルチチャネルの戦略を行うことにより第三章で述べた購買の変化に対応できる。

第七章「ロードマップ――大企業のネット化に必要なアクション」
これまでは事例やネット業界の現状などを取り上げてきた。それでは企業がネット戦略をやろうとするが、一体どころから手をつけたらいいのかという所で窮するだろう。ネット戦略の取り上げ方について本章でじっくり述べている。

第八章「推進力――イノベーションとしてのネット化マネジメント」
企業がネットを取り入れると言ってもその中でネガティブな要素はいくつかある。それを乗り越えるにはどうすればいいか。それが解決してさらに推し進めるためにはどうすればいいかという所を述べている。

最近では、企業のネット戦略はだんだんと行われてきているのだが、それでも遅れていると言いざるを得ないのが現状である。とりわけ世界恐慌となれば保守体質という殻に閉じこもり、リストラや経費削減といった対策を地道に行うばかりでしかないという考えを持つ経営陣もいることだから困りものである。そう言う時にこそこう言ったウェブ、ネット戦略というのがモノをいう時代に入ってきたのではなかろうか。