回復力~失敗からの復活

「失敗学」で有名な畑村洋太郎氏の一冊である。失敗の後にはどのようにして立ち直り、回復していけばいいのかという観点からして、これぞ「失敗学」という真髄を見せてくれる一冊である。

第1章「人は誰でもうつになる」
いまや日本の社会は「ストレス社会」といわれるほどになった。ひとつの失敗でも神経質になり、それが起こってしまうと精神が崩壊するまで詰られる。本章では著者自身が見聞した話であるが、まさにそのとおりというほかないだろう。ストレスに強い人でもうつになりやすいようなギスギスとした社会となっているのは間違いない事実である。

第2章「失敗で自分が潰れないために大切なこと」
失敗は誰でもいやなものである。しかしその失敗を恐れていては人は何も成長できない。人間誰しも一人でいられることは不可能である。立ち向かうことも重要であるが、失敗を紛らわすためにどうするべきかというのを本章では書かれている。おいしいものを食べたり、逃げたりすることで紛らわすことができるので大筋賛同できるが、唯一「酒を飲む」というのだけは賛同できなかった。失敗から逃げるあまり深酒に陥ってしまい、肉体的にも精神的にも破壊されてしまうおそれがある。

第3章「失敗したら誰の身にも起こること」
私たちはロボットではない。れっきとした「人間」である。
「人間」であるがゆえに「失敗」というのはつきものである。失敗は誰に対してもあるがそれについて責める人も必ずいる。人によってはそれを鵜呑みにして失敗から立ち直れなくなるという人もいる。では失敗に正しく立ち向かうためにはどうすればいいのか。正論というものを鵜呑みにせず、鈍感になることである。
最近では失敗に対してあれこれ追及するする輩が目立つ分、鈍感でいることこそが大事になってくる。

第4章「失敗後の対処」
私自身もたくさんの失敗をつけてきたが、数々の失敗の中で学んだのは「失敗で大事なことは「どうやったら失敗しないか」ではなく、「失敗したらどう対処するか」である」ということである。
理由は同じなのだろうか、本書でも最も多くページ数が裂かれている所である。
まず失敗を認めることが一歩であり、被害を最小にするためにはどうするかという対処を行うことである。
本章で「対処」について、一昨年話題となった食品偽装問題、その中の「赤福」についてを取り上げている。赤福は確かに食品偽装をしたが、健康被害は無く、なぜそれを騒ぎ立てる必要があったのかと著者は疑問を呈し、処分やマスコミの対応も大げさすぎると主張している。
あれからもう1年半以上たっており、もうほとぼりも冷めたことである。しかしこういった問題についてメディアの対応や私たちの感受の仕方というのはこのことを教訓に考え直したほうがいいというのは確かにある。

第5章「失敗に負けない人になる」
失敗に負けないためにはということで事例を紹介しながらあきらめないことが大切である。なんと言っても失敗に負けないためには、
「失敗を記録する」
というのは後々大きな財産となる。成功ばかりが目にすることが多いのだが、その成功にはそれを上回るほどの失敗が重なり、それを糧としていった結果である。

第6章「失敗の準備をしよう」
万事に備えるかのように失敗をイメージすることもひとつである。よく火災や地震を想定した避難訓練というのがあるが、その積み重ねにより被害を最小限に抑えた例はたくさんある。失敗を想定しておけば、万が一の失敗でも冷静に対応できる。

第7章「失敗も時代とともに変わる」
社会は何時でも変わるものである。しかしその失敗も周囲の目が厳しくなり、それが許されないJ豊凶になっていることは間違いない。
失敗はつき物であるという考えが今の社会にあるのだろうかという疑問はあるのだが、コンプライアンスという非常にあいまいな言葉まで飛び出てきた分、寛容性が薄れているのは確かな話である。

第8章「周りが失敗したとき」
周りでも失敗するときはある。そのときはフォローをするということが大切であるという。
本章の最初に「人名優先のインチキは許される」とあるが余り賛同できない。正義感と命を天秤にかけるとしたら命を守っても自分の信念が壊れてしまったら「ただ生きている」ということに他ならないからである。それであったのなら奇麗事かもしれないがもっとも大事なのは自分の心、意思というのが自分の生きる最大の栄養素であると私は考える。

失敗に出くわすことはこれまでの人生でもあり、これからの人生でも起こりうる。最初にも言った「失敗学」の続編というべきであろう。
失敗を恐れている人がいたらぜひ薦めたい一冊である。