理系アタマのつくり方

私は文系大学出身であるが、数学など理系の講義も数多くあったため、文系と理系の二足わらじといった考えでも差支えない。私は理系出身ではないのだが、一応「理系」のことについては片足を突っ込んだことがあるので、ある程度理系の考えていることはわかる。

さて本書はというと「理系アタマ」とあるが、簡単に言うと論理的で、数学力があり、抽象的に話すことができ、さらに自分の思考でもって「仮説」を立てていき、それを実践の場で「検証」を行うというのが「理系アタマ」の特徴である。

最近のビジネス書ではよく「論理的」や「数学」や「仮説」といったものを推奨する本がたくさん存在する。しかしそれをどのように応用していけばいいのかというのに困る人もいることだろう。本書はそれをいっぺんに学ぶことができる絶好の一冊といってよい。

第1章「なぜなぜ坊やになろう!」〜「なぜ」を考えることで、理由がわかる
「発明王」といわれるトーマス・エジソンは小学生のころ、わからないところがあった時にとっさに「なぜ?」「どうして?」という質問をしまくっていたために小学校退学となってしまった。しかしそれが発明にとって大きな糧となった。
さらに言うと今となっては赤字決算となってしまったトヨタであるが、原因を突き止めるために「なぜ」を繰り返すという。本書のストーリーでも上司が部下に「なぜ」を繰り返して聞いている。

第2章「風が吹いても桶屋は儲からない」〜確率の掛け算がつながりを決める
さて、ストーリーとあったが、本書は謎の上司(?)の中川さんに部下の国分さんが、プロジェクトに関しての相談をするというストーリーである。章ごとにテーマやケースを変えているところが面白い。
さて第2章は確率論や数学に関することである。数学というと図形や計算の照明を行うことや、「論理数学」という学問も存在するため「論理」と直結している部分が多い。

第3章「自分法則を発見しよう」〜共通点を見つけて、ルールを考える
今度は「抽象力」である。ここでは共通のものを見つけてルールを考えるという方法である。「パレードの法則」というものもここで登場する。

第4章「パターン分けしてみよう」〜分類すると、わかりやすくなる
今度はパターン分けをする。こちらも抽象化の一つである。

第5章「難しい暗算はやめよう」〜正確な計算をせずに、すばやく判断する
私はそろばん参段なので、難しい暗算問題があると途端に興奮してしまう困った体質である。なので本章の内容を読みながら、そんな自分を反省するしかなかった。
本章は「計算」ではなく、数字でもって「判断」をすることについて書かれている。「計算」とはいっても足し算や引き算ではなく、数字を見た上での「判断」を言っている。

第6章「目安を知ろう」〜わかるデータからおおよその範囲をつかむ
今度もまた数字である。今度は統計といったデータである。

第7章「早食いは儲かる?」〜売上は掛け算。観察から情報を分析し、比較する
私も早食いは得意な方である(大食いもだが、これいってしまうと自分が「大食漢」がと認めてしまうことになってしまうので、あえて言わないことにした)。
とある食堂に行った時の話である。その中で売り上げや購買客数といったものを観察から分析を行う。そしてそこから見込みを割り出していくというもの。

第8章「とにかくやってみる」〜仮説・検証の繰り返しが成功に導く
理系において実験を重ねることによって研究や仮説の精度を上げていく。それが「仮説」と「検証」である。「こうなのではないか」という推論から、仮説を立てていき、それを実践して、それが「真」なのか、「偽」なのかというのを探し出していく。

第9章「同じ失敗を繰り返さない」〜計画を立てて、原因を突き止めよう
「仮説」と「検証」は原因を突き止めること、すなわち「問題解決」にも大いに役立つ。特に原因特定の段階で仮説をたて、原因追究するために「検証」を行い、可能性をつぶしていくことが解決に向けての大きな近道であり、正当な方法である。

第10章「終わりのない楽しさを味わう」〜PDCAサイクルはいつまでも回せ
「PDCAサイクル」というのは、
「Plan」……計画
「Do」……実行
「Check」……チェック
「Act(ion)」……改善
を車輪のように循環することを言っている。

本書は「理系」に特化した「論理」「計算」「抽象」「仮説」「検証」といったものをいっぺんに学べるものである。私が読んだ限りでは本書はそういったことの「入門編」に当たるのではないかと考える。
というのは本書の内容は温かみとは無縁な「理系」の内容を、あるプロジェクト開始から終了までの、ストーリー展開をすることによって、さらに上司と部下の関係を描くことによってまるで「冷たい論理に肌のぬくもりを与える」ような内容に仕立てている。
特に新入社員といった人には必読というべき一冊である。