ガリア戦記

ガリア戦記」は紀元前58年から約7年間、カエサルがガリア、今のいうところのドイツ、ベルギー、フランスなどに遠征し、征服をしたという一連の戦争である。この征服により、ローマの支配下における平和(パクス・ロマーナ)の礎となった戦争である。

本書はガリア戦争の中で指揮を執ったカエサルが7年間の戦争を自ら記録したものである。全8巻で構成されており、1巻1年のスパンで書き続けたものである。ちなみに本書はそれをわかりやすい形で翻訳しながらも1冊に凝縮している。

第1巻「紀元前58年」
ガリア総督となったカエサルはヘルウェティイ族へ戦争を仕掛けた。景気はこれより少し前にヘルウェティイ族は他の族の攻撃に遭い逃れるために西方に逃れようとした。しかし、カエサルが総督である州(ガリア・ナルボネンシス)を通過しようとしたところカエサルが拒絶。そのまま戦争になった、というが本書を見る限りでは条件(だ場の買い集めなど必要なものを準備すること)があっただけで、ヘルウェティイ族はそれを準備できるような状態になかったみたいだ。財力がものを言ったのだろうか。
後半はゲルマニア人やウォセグスの戦いについて書かれている。

第2巻「紀元前57年」
カエサルの快進撃は続く。領土を現在のドイツより北東の地域への遠征を目指したのである。

第3巻「紀元前56年」
勢力は大西洋岸まで及んだ。ここではほとんどが海戦のことについて書かれており、のちに暗殺に参与するブルータス(「ブルータス、お前もか」という名言で有名な、あのブルータスである)が活躍したところである。

第4巻「紀元前55年」
第5巻「紀元前54年」
第6巻「紀元前53年」
ゲルマニア(現在のドイツ)とブリタンニア(今のイギリス南部)にローマ人(ガリア族)としては初めて侵攻した。行こう5・6巻にわたってこれらの進行について書かれている。
これまでは楽ではなかったものの快進撃を続けるまでに至ったが、ここに来て初めて苦戦を強いられ、第6巻のブリタンニア遠征では敵軍の計略にはまり派遣軍歌壊滅してしまうという事態に見舞われた。しかしカエサル軍によって鎮圧はしたものの、失ったものは大きかった。

第7巻「紀元前52年」
いよいよクライマックスである。
第6巻の最後で、民族首領の処刑により、自尊心を傷つけられ反乱をおこすところからはこの間は始まる。
当のカエサルはローマに滞在中であったため、司令塔不在のまま反乱の火種は大きくなった。
カエサルがようやく動き出したころにはローマ軍対ガリア連合軍というような図式になった。結果論からいえばカエサルが勝利し、ガリアをすべて掌握し、戦争が終わったということになるのだが、アレシアの戦いなど激戦も多数あった。

第8巻「紀元前51年」
ここでは小さな反乱での鎮圧とガリア全土のローマ属州化の祝いについて書かれているが、この間だけはカエサル自身が書いておらず、元老院議員のアウルス・ヒルティウスが書いたものである。なぜ8巻だけアウルスが書いたのかについては、いまだに明らかになっておらず、仮説がいくつかあるくらいである。

ガリア戦争は結果としてカエサルが率いた軍が勝利をおさめたが、決して楽な戦争ではなかったことが物語っている。本書でもカエサル自身の葛藤や心情が散文的に書かれているためか、それがありありと感じ取れた。
さらにドイツ人の祖先ともいえるゲルマニア族、どちらかというとローマの色が強いガリア民族の特性もカエサル自身の主観によるものだが克明に書かれている。
散文的で、読みづらい部分はあるのだが、ガリア戦争の映像がパッと浮かぶような書き方をしている。直接指揮していただけあって臨場感も抜群であり、古典の中でも結構読みやすい部類に入る。