地震予知の科学

2006年に緊急地震速報というのが公式にスタートしてからもう3年経とうとしている。私は今でも地震予知というのに関しては信じておらず、実際にこれが役に立ったというケースを聞いたことがない。政府主導で動いているため税金の無駄遣いだという声も少なくない。

本書はこの地震予知について、日本地震学会の中でも、前述の予知についての検討委員会の観点から、地震予知の必要性を主張している。

1「地震の発生をあらかじめ知るには」
自然の原理からでも「地震予知」というのは可能である。そのひとつの手段として「雲」というのがある。「地震雲」と呼ばれており、直線的な雲が西から自らの方向にまっすぐ伸びる雲のことを指している。それだけではなく、鳴く動物を飼っておくのもまた然りである。動物は本能で生きるため、自身だという直感は人よりも数倍優れている。

2「これまで何が行われてきたか」
これまでどのような「地震予知」の研究を行ってきたのかについて2〜3章に跨って研究成果を述べている。地震予知の研究のはしりとなったのは濃尾地震(1891年)関東大震災(1923年)の時である。その後大きな地震の毎に活発的に研究がすすめられ、時がたつにつれて歩みが遅くなっているように思えてならなかった。

3「この一〇年で何が明らかになってきたのか」
数十年間、緩急はあるものの進められてきた地震研究であるが研究の成果として地震のパターンとそれに関連する大地プレートの移動の仕方によるメカニズムについて書かれている。
理科的・数学的要素が強いものの図や画をもとにわかりやすくしているため数学嫌いや理科嫌いでも幾分読みやすく書かれている。自身について勉強を始めたいという人にはうってつけのところである。

4「地震を予知することの今」
地震予知の中で最も危険視されているのが東海地方、その次に関東地方である。関東地方では度々ではあるが震度3や4といった地震は何度か起こっているが東海地方ではそれほど大きな地震というのは関東に比べたら少ない。むしろ数年後危険性があると2地域ばかりがずっと警戒した方がいいという報道をしているが、ここ最近大規模な地震が起こっているのは2地域ではなく、甲信越や九州、北海道・東北といったところである。果たしてこの地震予知は役に立つのかという疑問さえ残る。
さらに言うと2006年から始動した「緊急地震速報」も実例がまだ10例しかなく、さらに地震速報によって救われたという例がない。まだ始まったばかりとはいえどもうすぐ3年経つので、緊急地震速報の打ち切りも視野に入れた方がいいのではないかと考える。

5「地震予知のこれから」
地震速報は結果的に言うとまだ主立った成果が出ていないというのが現状としてある。そしてもう一つ「地震予知」の必要性に関して疑問をもっている。
緊急地震速報が出たとしても「直下型地震」といった地震速報が出た直後に起きたというケースも少なくない。もしそれが前もって予知できるというのであればこれ以上のことはないが、そもそも「地震予知」によって自身による危険性を最小限にできるのかというのである。

確かに前もって予知して、そこで対策を立てて最小限にできればこれ以上のことはないが、では本当にそれがかなうのだろうかというのも疑わしい。過去の事例においても前もって準備しておけば助かる可能性があったというよりも、
「地震が起きた後、どれだけ迅速に救助を行い、人々を避難させ、ライフラインを復活させるか」
というのが大事なのではないだろうか。それに関する時間や労力を地震予知ばかりに生かせては本末転倒ではないだろうかと私は思う。
地震予知に関する研究はこれからも続けていくべきであるが、その一方で政府は緊急地震速報ばかりにかまけず「起きた後」の対応についても詰めていくべきである。