「記事トレ!」日経新聞で鍛えるビジュアル思考力

「社会人として日経新聞は必読だ」といろいろなところでよく言われている。いろいろな新聞を批判している私でも日経新聞は毎日ではないものの読んで勉強にしている。

とはいっても日経新聞というと他の一般紙と違い、経済に特化しており、株や先物などの投資やビジネスに関することは、素人にとって見たら難しいことが多く、とっつきにくいという。
その対策かどうかはわからないが「日経新聞の読み方」というだけでもAmazonで検索をすると53冊も存在する

私もいくつか読んだことはあるのだが、ほとんどは経済指標の読み方というものが多く、「お堅い記事をお堅く読む」というような方法ばかりが取り上げられている。
では本書はどうなのかというと、今までの「読み方本」とは一線を画しているように思える。それは新聞を使って「思考力」を高めていく道具として使うという手ほどきの1冊である。

1章「できる社長の5つの教え」
当時の著者は営業職に異動してから日経新聞に目を通し始めたという。「やらされている」という感じが強かったのだが、第1章のタイトルにある社長の教えにより新聞の読み方をがらりと変えた。
このことから「新聞の読み方」について意識し始めたという。

2章「日経新聞を「絵」にしたら、見えてきた!」
新聞というと「文字」がほとんどであり、文章を読む人が苦手な人はまず敬遠されるところである。
しかし文字を絵にして表わすことにより分かりやすく、かつ頭に定着できるようになる。

3章「「ヒト×モノ×カネ視点」でビジネスを整理する」
ヒト・モノ・カネと本書で書かれている「3W1H」と似ているように思える。
本章ではこれらの組み合わせといったものについて書かれている。

4章「「ビジュアル思考力」とは何か?」
簡単にいえば「図」や「絵」でもって思考をするということを言っており、よくいわれる「ロジカルシンキング」とは仕組みが大きく異なる。「ビジュアル思考力」は視覚や感性で捉えられるため右脳寄り、文章と組み立てによる「ロジカルシンキング」は左脳寄りの考え方に当たる。
しかし本章では双方の考え方をうまく織り交ぜて考える方法を提唱している。

5章「ビジュアルで理解(Fact)する――リーディングレベル1」
大きく分けて1〜4章は本書の「理論編」に当たるところである。
ここからはリーディングレベルに合わせての実践編となる。まずは初級編に当たるレベル1のところからである。
フォーマットに沿って線を入れたり囲ったり、シートを記入して「見える化」をする。
まずは「ヒト・モノ・カネ」「3W1H」を見つけ、図式化していくことから始めることが本書を学ぶ上での第1歩である。

6章「ビジュアルで会話(Opinion)する――リーディングレベル2」
前章では図式化することによって構造を理解するというのが目的であった。今度はそこから発展的になり、会話の種となり、そして自分の会社ではどのような対策をしたらいいのかということについてである。
さらに図式化しながらもニュースの裏側を読むことについても書かれている。

7章「ビジュアルで発想(Idea)する――リーディングレベル3」
図式化することによって上質の材料を仕入れることができたら、それを新しいビジネスに役立てるために、そしてアイデアを生むための物にする。
これまでの3章の実践編では巻末にあるシートがあるのですぐに実践が可能である。

8章「「記事トレ!」でビジネス脳を鍛える」
ここではまとめに当たり、日経新聞のファンクションというのを紹介している。
「情報メディアとしての新聞」、ではなく「学習メディアとしての新聞」として、役割がシフトしているようだ。

普通ノウハウ本というのは「実践するため」という役割が多い。当然本書も例外ではない。しかしあまりにも難しすぎて、もしくは面倒でやらないというのも多いのが現状である。しかし本書は日経記事からの練習問題を解いていくうちに「よし!やろう!」という意識が湧いてくる。本書の他に日経新聞があればすぐにでき、そこから思考力を培っていける。
本書は20代後半からの人をターゲットにしているようだが、社会人1年生のみならず30代・40代以上の人たちにもお勧めできる。ただ単にニュースを知るということばかりではなく、そこからどのような思考をしていけばいいのかということで新聞を読むのが数倍面白くなる。