ルポ 米国発ブログ革命

日本のブログ人口は約2,000万人と言われ、ブログは日本社会なくして成り立たなくなったと言えるほど過言ではない。しかし日本におけるブログのスタンスは人それぞれあるとはいえ個人的な日記、いわゆる徒然日記といったものが多くなっている。本書はアメリカのブログ界について着目しているが、アメリカにおけるブログのスタンスは日本のそれと違っており、主にニュースなどのコラムといったものが多い。しかもブログ同士の議論が活発であり真の意味で「メディア」として政治的にも影響を及ぼしている。ではアメリカにおいてブログはどのような影響を及ぼしているのかというのをルポルタージュにしたのが本書である。

第一章「台頭する「個人発」メディア」
アメリカではイラク戦争やアメリカ大統領選挙に大きな影響を受けたモノとしてブログが挙げられており、いわゆる「パブリック・ジャーナリズム」が形成された。これはアメリカのみならず中国や日本、韓国など数多くの国々で広まった。
しかし情報統制のある中国では市民記者が続々と逮捕されており、中には終身刑になった記者もいた。中国におけるインターネット革命は広がりを見せており、言論の自由は規制されても、現在の統制と過酷な現状は世界中に流されている。統制された国でも、民主化や自由を目指して果敢に活躍している姿が見て取れ、それが世界にどのような影響を及ぼすのかこれからどうなっていくのか注視したいところである。

第二章「個人発メディアの課題」
個人発のメディアは情報の質によって大きな違いがあり、時には虚偽情報、言わば「デマ」が流れることも多い。今日数多くのニュースが世に出ているのだが、その中でも何十万人の人々がその虚偽に騙されたことに関しても書かれている。
市民ジャーナリズムは既存メディアのしがらみも受けず、情報によってはそれをも凌駕するほど有力かつ衝撃的なものもあるが、虚偽といったものがフィルターにかけられることが少なく、全ては情報を受け取る側に判断を委ねるということが多い。

第三章「のたうつ「恐竜」たち」
ブログは既存メディアのなかでも新聞に関して大きな打撃を受けている。これについては別の文献で日本の新聞の衰退とブログやパブリック・ジャーナリズムについて考察をしているが、アメリカでも同じである。

第四章「つながるジャーナリズムへ」
インターネットにおけるジャーナリズムの利点としては「双方向」である。その双方向のメディアは批判合戦という水かけ論から、ニュースに関する建設的な議論に至るまでピン切りはあるが、これからのニュースは受け取るではなく、そこから何を考えるのか、何を伝えるかというのが課題となり、情報は単なる物々交換ではなくなり、情報の質の向上という連鎖が起こる。

日本においてもブログ・ジャーナリズムはあるが、アメリカほど影響を及ぼすものではない。第一、選挙の時に影響を及ぼすものを流すとなれば「公職選挙法」に抵触する可能性もある。とはいえブログなどのインターネット・メディアの影響力はこの先看過できないものとなるのは確実である。政府はそのインターネットをどのように駆使して、メディアと付き合うことができるのかというのが課題と言える。