王様の速読術

サラリーマンは「忙しい」と言われる。日本社会において「忙しい」と言うのは肯定的に扱われており、ワーク・ライフ・バランスと叫ばれている時代であってもまだ「働きたい」という考えの人が多いようである。日本人の特性なのかどうかは考察する余地はあるが、その中でも読書をしたいという人は多い。世の中には数多くの「速読術」が世に出ているが、それをやったからと言って効率的に読めるというわけではなく、「ただ速く読む」になり下がっているものもある。しかし本書は速読でありながらも要領よく読むという所にフォーカスをしている。

第1章「ワシには30分しかないのじゃ!」
明るい国の王様と、暗い国から逃げてきた者との会話が最初にあり、そのあと話のなかから速読術についての解説を行っている。
本は最も効率的に学べるツールである。ただその用途によっては「愉しみ」の一つとしての「読書」というのもあるが、本書では資格勉強や仕事という役割から「実読」という観点で本書は説明している。私は「実読」よりも「楽読」中心であるのだが、資格勉強や職業柄により資料が多いので「実読」も鍛えること必要がある。
本書は効率的な読書を目指している。

第2章「30分で1冊を読破――王様の速読術」
ここから速読術に入るが、本書では30分に1冊読破というペースでどのようなことをやるのかというのを紹介している。速読を3段階に分けており、

1.「プレビュー」…5分
2.「前ページを写真読み」…5分
3.「スキミング手法で読む」…20分

1.は読まないで考える時間にあてるという。2.は確か「フォトリーディング」に近い要素であった。本書の速読術の核となるのは3.であろう。3.は言わば重要な点をじっくりと読むという点で「精読」というものに近いが、限られた時間のなかで読むため、速読をしながらという所では熟読の類には入らないだろう。他にも感想をまとめるといったフィードバックの時間も別に設けられており、何を得たのかというのを考え直す時間もあるため、効率の精度も高まる。

第3章「目的別に速読術を使いこなすコツ」
第2章が全てを網羅できる「王様速読術」の総論編と言うならば、本章は「各論」というべきだろう。
目的別に合わせて、第2章の内容をベースに様々な方法を紹介している。専門書の読み方、視覚勉強のための読書術、幅広い分野の読書術、英字文献の読み方、新聞や雑誌の速読術など目白押しである。

第4章「錬金術でアウトプットしよう」
質のよいインプットの後は「質の良いアウトプット」である。本書ではインプットのみだと速読術として成り立たず、読書だけという自己満足に陥ってしまうからである。そのためにアウトプットの重要性について説いているのが本章である。ただアウトプットとはいっても様々な方法があり、具体的に行動をすることもアウトプットとして挙げられ、さらに書評によって自らの考えを落とし込むというのもまたアウトプットの方法としてある。

第5章「大王様への道」
第2〜4章では実際の速読術を学び、本章ではまとめといったところである。訓練の仕方やアウトプットの方法、速読術を鍛えることによるメリットがふんだんに書かれている。

情報の洪水といわれるほど世の中は情報で氾濫しているといってもいい。本も例外なく日本では1日に200冊もの本が発売され瞬く間に書店から姿を消す。その中で私たちは仕事をするにあたって、勉強するにあたって、これからの人生に向けてどのような情報を得て、どのようにアウトプットしていけばいいのか、最適なインプット・アウトプットはないのかというのを模索することであろう。はっきりと言っておくが、それらに「絶対的な答えは存在しない」。答えは人それぞれ違い、場合によっては複数存在するばかりか、何もないということさえあり得るのである。

本書は実読も兼ねながら資格試験や専門書の勉強法など幅広い読み方について紹介されており、自らの読書の糧の一つとなる。そこから自らカスタマイズしていき、最適な読書術を磨くまでどのくらいかかるのかは自らも分からない。