海賊の掟

昨年、ソマリア海賊船の対策として、政府が自衛隊派遣をしたというニュースがあった。その時には野党、特に社民・共産の両党は自衛隊のソマリア沖派遣反対を訴えるという騒ぎにまで発展した。

海賊がいるというのは現実にいたということは知らず、童話に出てくるような架空のもの、もしくは過去のものというイメージを持っている人は少なからずいたのかもしれない。私もそう考えていた。

だが、現にソマリア沖を牛耳っているだけではなく、世界中色々なところに海賊は存在しており、船で来た者たちに対して暴力・略奪を繰り返している。本書は海賊についての「世界史」である。

第一章「現代に生きる海賊」
現在における海賊で有名なもので言うと、本書のプロローグに書かれていたマラッカ海峡(マレーシア付近にある海峡)で日本のタグボート「韋駄天」が襲撃されたという事件が4年前に起こった。マラッカ海峡の海賊は現在TVで取り上げているところは少ないものの、世界的にも被害が大きいところで知られているが、スマトラ沖地震以降は激減している。津波による被害であるが、海賊もその被害に遭ったのとみている。
それに代わって最も注目されているのがソマリア沖である。90年代から起こっている「ソマリア内戦」により海賊行動を行う人たちが増え、2007年以降急速に増加し、国連では2008年に決議を採択したことによって多くの国々が海軍やそれに準ずる軍の派遣が相次いだ。

第二章「七つの海を股にかけた男たち」
ここでは「海賊の世界史」について書かれている。海賊の歴史は深くギリシャ神話にまで遡っている。中で最も注目され、かつ多かったのが中世〜近世ヨーロッパにかけて、当時は「大航海時代」ともいわれており、船を使い海を渡り、数々の島を開拓して言った歴史がある。その中で海賊との戦いに関するエピソードは歴史の教科書でも、小説でも、伝記でも枚挙にいとまがないほどである。
それが色濃いせいか、「海賊」と言うと中世〜近世のヨーロッパと言うのを思い浮かべてしまう要因となったのかもしれない。

第三章「日本の海賊」
では日本における海賊はどうだったのかと言うと、決していないわけではない。古くは平安時代、藤原家が支配していたころに藤原純友が海賊集団として瀬戸内海を中心に活動したことが始まりであった。
日本における海賊の全盛期は16世紀。ヨーロッパの時期と結構似ていることが分かる。様々な海で海賊は構成されていたが、とりわけ多かったのは瀬戸内海や九州といった所であったという。

「海賊」は今や歴史のみならず、小説や漫画・アニメに至るまで様々な所で活躍している。今私たちが見ている「海賊」と言うのは全体の1割にも満たない。では残りはと言うと本書がのその満たないところを補ってくれる。そう思える一冊であった。