老い人の町

日本ではもう20年以上も前から「高齢化社会」である。平均寿命が男女ともに世界一となっているだけあってその事実はもう覆すことができないほどにまでなった。

私がいつも思うのは「長寿」というのは果たして幸運なことなのかという疑問である。もちろん長生きだったらやりたいことがたくさんある人、もしくは現世を楽しみたい人にとってはこれ以上いい話はないし、「死ぬ」という悲しみもそれだけ引き延ばすことができる。しかし人はいつか死ぬ。それは人間、いや生物が生きている限り避けては通れないものである。しかも「長寿」であることは必ずといってもいいほどいいというわけではなく、「生き地獄」ともいわれるような状態になる人も少なからずいることも忘れてはならない。

私はこう問いたい。

「もし生きるとして選択肢があるとするならば、何もせずにぼうっとしたまま100歳まで生きるのか、あるいは自分のことを為して40歳までで死ぬか」

ただ長生きするよりも、自分がやるべき事をやり遂げてから死ぬことを考えている。何歳までとはいえ無いものの、どちらかというと後者の考えである。

余計な話になってしまったので戻すことにする。

本書は小樽を舞台とした老人の生活について欠かれた短編集である。小樽市は私が大学の時の4年間住んでいたため親近感がある。あとがきにも記してあるとおり小樽市はおおよそ4人に1人が60歳以上の高齢者に当たる。大学生活での体験であるが、たいてい朝や昼といった時間帯にスーパーに行くとたいがいご年輩の方々がほとんどであったことを思い出す。「ウィングベイ小樽」や「TSUTAYA」はこの限りではないが・・・。

小樽市での取材を通じて老人の現状と理想について非常によく書かれた一冊だと思う。それと同時に高齢化社会が社会問題かとなっている時期なだけに、高齢者としてのあり方について一石を投じながらも、温かみにあふれた生活増がありありと伝わってくる。高齢者としていかに生きるべきか、というのを小説という形で表した一冊をいえる。