数学が歩いてきた道

株式会社オトバンク 上田渉様より献本御礼。
数学の歴史は結構長く、古代ギリシャ時代にまで遡る。そう、ピタゴラスが定理(「ピタゴラスの定理」)を唱えたときにまでになる。約2000年もの間、数学は様々な学者が定理を唱え、今日の数学の教科書にまで波及してきた。そしてこれからも歩み続けいくだろう。本書はこれまで歩み続けた数学の歴史をたどっていくというものである。

第1章「深い森へ」
数学を確立させたピタゴラスの話から本章は始まる。ピタゴラスは哲学の祖といわれるタレスに師事し、そこから幾何学や天文学を学び、定理を確立させた第一人者である。「万物は「数」である」という言葉を残し、数学の祖とも言われた。本章では主に古代ギリシャ時代で活躍した数学者を紹介している。ピタゴラスのみならずユーグリッド、ツェノンらもいる。

第2章「近世に向けての旅たち〜文明の流れのなかで」
時代は一気に近世に移るのだが、それまで数学の進化は滞っていたのかというと、決してそうではなかった。むしろギリシャではぐくまれた数学が世界各地に伝搬されていったという。
また近世の前にも、物理学に派生して様々な定理や公式が生まれてきたが、私が特に印象深かったのは対数の誕生である。2ページだけであったのだが、ネピアによる発見は画期的だったということが窺えるものであった。

第3章「ヨーロッパ数学の出発」
時代は近世に入り、数学は格段の進化を遂げる。特に哲学者で有名なデカルト、「ニュートン力学」でも知られるニュートン、ライプニッツらの研究により、数学の幅が広がり、幾何学・微分積分などが誕生した。

第4章「数学の展開」
実はこの数学はある学問とともに広く・深くなっていったという。3人の学者に共通するのだが・・・そう、「哲学」である。哲学とともに数学は広がりを増し、ヨーロッパでは「アカデミー」も誕生した。そこから「解析学」など数学の中でも様々な分野が生まれたのだが、中でも本章が紹介されているのが「オイラー」である。数学にある程度使った人でなければ出てこない人物である(正直私も大学2年の時に学んだのだがチンプンカンプンだった)。ここでは「無限」と言うことについての批判や定義の変遷について書かれている。

第5章「関数概念の登場」
関数と言うと中学や高校でいやと言うほど出たことを覚えている。特に大学受験では何度もこれに苦しめられたことを覚えている(商業高校出身だったために、自分自身で勉強しなければならないのでよほどであった)。
この関数が初めて用いられたのは17世紀後半、ライプニッツによって使われたのが始まりであるが、隆盛したのはそれより後の18世紀になってからである。その走りをライプニッツが行ったといっても過言ではないと言える。

第6章「解析学の展開」
数学はやがて複雑化していき、「解析学」と言う所までやってきた。簡単なところで言ったら「ベクトル」や「複素数」といった所に当たる。

数学は歴史とともに、でありながらも近代から現代にかけて飛躍的に進化を遂げてきた。「学力低下」の中で数学や理科などの「理数系」の低下は著しく「理数離れ」という言葉さえささやかれる。確かに公式を覚えたり単語などを覚える、それだけでは愉しみは生まれない(それなしでも同じだが)。単語を覚えるのに疲れたら本書のようにどのような歴史を辿って行ったのか、さらりと読むだけでもすぐに興味がわいてくる。私はそう考えている。