アサーティブ―「自己主張」の技術

よく自己啓発書やビジネス書において「アサーティブ」という言葉を目にしたり、耳にしたりする。ではこの「アサーティブ」とは一体何なのだろうか。簡単に言うと「自己主張」をするという意味である。アメリカでは1960年代から「アサーティブネストレーニング」が始まり、日本でも最近言われ始めた言葉である。

元々日本には「謙虚」や「謙遜」、「侘び・寂び」といった文化が栄えており、自分を表だって主張をするという性格ではないというのは簡単であるが、この日本にアサーティブが浸透するのかと言うと疑わしさも拭いきれないのが現状である。とはいえ、日本の企業が世界に目を向けていると考えると持たなくてはいけなくなったというべきかもしれない。
本書は日本人が苦手なものの一つでいう「自己主張」、「アサーティブ」の技術をどのように磨けばいいのかというのが1冊に詰まっている。

第1章「そもそも「アサーティブ」とは何?」
最初にも述べたとおり「アサーティブ」は1960年に「アサーティブネストレーニング」という言葉からできた言葉である。
そこでは「主張をする」と言う意味合いをいったのだが、主張をするだけで相手の意見や考えを聴き入れないとなると、単なる独りよがりであり「アサーティブ」ではない。自分の主張をする前にまずは相手の意見を聞くこと、コミュニケーションにおいても「話す」ではなく「聞く」ことも重視しなければ相手は聞き入れられることはない。相手の意見をくみ取りながらも自分も相手に有益を与えるような主張をする。「win-win」の関係を持つことが重要と本書では主張している。

第2章「「言う」技術――苦手意識の原因が分かれば、言える!」
「アサーティブ」は「主張をする」であるがそれを細かく分けて行くと第2章から「言う」「伝える」「知る」に分けられている。
まずは 「言う」であるが、立場や時や場合によって「言いづらい」「言えない」と言うような状況に陥ることがある。ビジネスにおいては上司―部下、取引先との力関係と言うのも働く。歯に衣着せぬように主張をするだけでも命取りとなりかねない。また「言う」とはいってもだらだらとした長話をすると、あいてもしらけてしまい、自分の考えを聞き入れられなくなってしまう。
そのために自分の苦手なもの、いうことにおいて阻害となっているものを洗い出すことを本章ではいっている。自分の要因を経営学における「SWOT分析」によって分析を行うこともできるため傾向と対策が立てやすくできている。

第3章「「伝える」技術――伝わらない理由、伝えるスキル」
「言う」は「云う」という感じにもあてはめることができる。後者の「云う」は人に言うことなので「伝える」という言葉にも使うことができる。相手に自分の良さ、もしくは会社の良さ、商品の良さを「伝える」ためにはどうすればいいのかというのは完璧に伝えるのは難しくても、自分が最も伝えたいことを強調したり、緩急をつけたりして伝えるだけでも相手に受ける印象が違ってくる(ただし、度が過ぎても逆効果である)。
また相手の性格を知るということも大切であるが、これについては次章に詳しく書かれている。

第4章「相手を「知る」技術――相手のタイプをつかんで“相手目線”を磨く」
相手を一目見ただけではよほど洞察力を鍛えない限りは難しいものである。しかし相手と話して行くうち、もしくは相手と付き合ううちにだんだんと性格が理解できるようになる。そのうえで相手を「知り」そのうえで相手の特性に合わせて主張する、聞く、話すをすると良いという。

第5章「「Give & Take」から「Give & Given」へ」
一般的には「Give & Take」という言葉はあるのだが、人脈本などでは「Give & Give」という言葉を使うことが多い。双方揃って与えられるものは何なのかということを考える、もしくはノウハウや感謝を与えるというものである。アサーティブの技術は第1章にも書いてある様に「win-win」であることから、与える時も見返りを求めず気持ちよく相手に尽くすことは人脈術にも、会話の技術にもあるのかもしれない。

ビジネスの根幹は「人」である。人と人との結びつきによって成り立っているといっても過言ではない。その中でいかに人間関係を円滑にさせるのか、いかに良好な関係を築かせるのか、答えではないが、少しでも円滑にさせる手段はそこにある。本書はそんな一冊である。